外貨獲得で半導体・鉄鋼レベルに! 50兆円をゲットだぜ!日本のゲーム#21Photo by Yoko Suzuki

「日本のゲームは世界で一番売れている、業界をリードしている」――。かつてこう喧伝された時代もあったが、現在では状況は大きく変わっている。米国企業の勢力増大に加えて、かつてモバイルでしかゲームを出していないとみられていた中国・韓国勢までもが売れるゲームを次々投入しているからだ。特集『50兆円をゲットだぜ!日本のゲーム』(全25回)の#21では、ベテランゲームライターの記野直子・カイオス代表が豊富なデータと共に「覇権交代」の内情を解説する。(カイオス代表 記野直子)

40年で覇権交代した販売ランキング
日本ゲーム最強は過去のもの?

 1980年代、任天堂、セガ、ソニーなどの日本の家庭用ゲーム機メーカーの貢献で生まれた家庭用ゲーム市場。それから40年以上が経過し、現在の勢力図はどう変化したか。歴年のランキングを振り返りながら検証しよう。

 まずは、94年の全世界のゲーム売り上げランキングだ。全世界市場のランキングトップ10中、日本のゲームは7タイトルもあった。任天堂、セガの日本発ハードウエアにけん引されたほか、日本市場自体が大きかったため、世界市場における割合も大きかったのだろう。

 一方、同年の米国のランキングでは、米国独自色はすでに見える。実は米国では日本からのゲーム供給だけを当てにせず、欧米向けのゲーム開発をしっかり行っている。NFLやNBAなどのスポーツゲームを、日本でセガやコナミなどが開発を始めようとする前のことである。

 セガやコナミは海外でこれらのスポーツにニーズがあることを知ると、果敢にゲーム開発を開始し海外市場を取り込もうとしていた。この頃の日本のゲーム開発会社はユーザーのニーズに合わせようと必死に工夫を行っていた。

 当時欧米におけるゲーム開発は、PC向けに作ったソフトウエアを家庭用ゲーム機に移植するのが常だった。当時からPCでゲームタイトルをプレイする習慣のあった欧米では、まずはPC向けに作る、が鉄則だったからだ。

 しかしながら、PCで開発されたゲームをスペックが乏しい当時の家庭用ゲーム機に移植するのは至難の業であり、PCではなく最初から家庭用ゲーム機向けだけにゲームを開発していた日本の開発陣の優位性の高さは容易に想像がつくであろう。

 また、当時は家庭用ゲーム機のスペックに限界があった中で、日本のゲームハードウエアメーカーには、そのハードの性能を極限まで引き出す職人芸を持つエンジニアが多かったといわれている。彼らはすご腕を披露してさまざまな神ソフトウエアを世界に放出していった。あらゆるゲームジャンル、アイデアなどはほぼ日本のゲームから生まれたといえる。日本のゲーム開発が世界中から称賛されていた時代でもあった。

 ところが、それから20年後の2014年。米国のゲーム売り上げランキングでは様相がガラリと変わるのだ。

 かつて、「家庭用ゲーム機市場」という市場を作った日本のゲーム会社は、その後、世界市場で競争力をずるずると落としてきてしまっている。それはなぜなのか?そして、現在売り上げランキングで首位に立つ企業にはどのような特徴があるのか。次ページから見ていこう。