銀行株は米大統領選の投票日以降、値上がりしている。テールリスク(発生確率は低いが発生すると大きな損失をもたらすリスク)も上昇している。
S&Pの地方銀行株指数は11月5日以降、12%上昇しており、これは理解できる。銀行業界は規制緩和や、想定外の損失に備えて保有が義務付けられている資本についての要件緩和を見込んでいる。こうした動きは今後数年間に銀行の収益面で助けになるかもしれない。
投資家はこれまでのところ、起こり得るトレードオフを無視したがっている。ドナルド・トランプ次期米大統領が提案した 大幅な関税引き上げは、インフレを誘発し、金利や債券利回りの上昇につながる可能性がある。米国債や政府保証付きの住宅ローン担保証券といった長期の固定金利資産を大量に保有している銀行にとって、そのような事態は債券価格の下落に伴う含み損が拡大し、バランスシートが悪化することを意味する可能性がある。
これは2023年3月の シリコンバレー銀行(SVB)の破綻につながったタイプの損失だ。10年物米国債利回りは4.23%と、大統領選当日より若干低下しており、この類いのリスクは今のところ対処可能と思われる。しかし、同利回りが5%あるいはそれを上回る水準に戻ることがあれば、一部の金融機関にとっては再び問題となりかねない。
そこで厄介なのが、地銀大手がトランプ氏の次の任期中に破綻した場合に、同氏の新政権がどのような反応を示すかが予測不可能なことだ。トランプ氏が過去にどのような見解を支持していようとも、同氏は実際にその状況が起きて自身の対応が試されるまで、自分でもそれが分からないかもしれない。