証券会社の収益モデルは過去30年余りで激変している。そのトレンドは2025年以降にさらに加速しそうだ。一方で元社員による強盗殺人未遂事件やインサイダー疑惑も多発している。好循環の芽を摘むリスクは、社内に存在する。特集『総予測2025』の本稿で明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
株売買の「委託手数料」激減
SBIと楽天証券の無料化で拍車
証券業の三大収益が「受入手数料」「トレーディング損益」「金融収益」であることは昔も今も変わらない。このうち証券会社が自ら株式などの売買を行うトレーディング損益は相場次第であり、金融収益も金利の動向に左右される。大きく変わっているのは、受入手数料の中身だ。
バブル期から1990年代にかけて稼ぎの中心は、受入手数料の一種である「委託手数料」だった。これは株式などの売買を行うごとに投資家から受け取る手数料を指す。証券会社の一般的なイメージとして定着する伝統的な収益源だ。
しかし委託手数料は99年の完全自由化以降、インターネット取引が普及したこともあって一気に低廉化が進んだ。
23年秋にはSBI証券と楽天証券が国内株の委託手数料を無料化したため、低廉化にさらに拍車が掛かるだろう。
日本証券業協会が会員企業263社の23年度決算を集計したところ、営業収益に占める委託手数料の構成比は12%だった。89年度の53%から大幅に減っている。その委託手数料に代わって増えているのは何か。次ページで明らかにする。