成熟した日本の生命保険業界にあって、新契約の業績が絶好調のソニー生命保険。その一方で、2024年度第1四半期決算は赤字となった。さらに、25年10月をめどに、ソニー生命など金融事業を統括するソニーフィナンシャルグループが、親会社のソニーグループから分離・独立して株式を再上場することが決まっているが、残された時間は少ない。そうした中、中核であるソニー生命のかじ取りをどうするのか、新たに策定した中期経営計画のポイントと共に、高橋薫社長に話を聞いた。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)
新契約の獲得は絶好調も
2024年度第1四半期は赤字決算
――社長就任から約1年が経過し、今年6月末には新たに中期経営計画を策定しました。中計のポイントは何でしょうか。
新たに中計を策定する前提として自分なりの考え方を述べますと、手前味噌かもしれませんが、ソニー生命は成長できている会社だということです。
例えば、業界全体の新契約高は10年前の70数兆円から現在は約62兆円まで減っていますが、当社は約4兆円から約10兆円に増えています。新契約年換算保険料についても、約600億円から約1200億円に倍増しています。ライフプランナーの数もしかりで、営業職員が減少している中、約4500人から約5500人に増えています。
――その理由は何だと考えていますか。
お客さまの想いを訪ねて聞いていくビジネスモデルにあります。お客さまがどうなりたいか、何に不安を抱えているか、そうした想いを聞いて一緒に考えて提案する。そうしたビジネモデルであるがゆえに、すでに保険に入っている人やあまり考えずに保険に入った人、途中で考えが変わった人などもお客さまとなります。さらに個人だけでなく法人もそうですし、想いを同じくする代理店も同じ取り組みを行ってくれています。そこが成長できているひとつの要因だろうと考えています。
――その上で、同じソニーフィナンシャルグループ(FG)のソニー銀行やソニー損害保険と顧客情報を共有していくと。
ここで気を付けなければならないのが、「クロスセル率を上げよう」と言ってしまうと目線が内向きになってしまい、率は上がりません。銀行や損保の商品をいかに売るかではなく、お客さまの想いを聞きながら、銀行や損保、グループの介護も含めて潤滑油的なサービスを提案することで、お客さまとのエンゲージメントを高めていくことが大事です。
もっと言えば、グループにはない少額短期保険などの提供もあるかもしれません。それらを結び付けて何ができるのか。そのためのデータベースとして、各社の顧客情報を共有するシステムを開発しました。今中計期間では、こうした取り組みにトライしていきたいと考えています。
――法人顧客は増えてきましたか。
ここ数年、ライフプランナーと代理店ともに法人顧客がきちんと増えているだけでなく、両者のコラボレーションも順調に進んでいます。上半期の業績が見えてきたところですが、あくまで推計ですが、法人に関しては日本生命保険さんに次ぐほどの規模になってきています。
――確かに、2024年度第1四半期(4〜6月)決算でも新契約は絶好調でしたが、その一方で解約返戻金の増加や有価証券売却損などにより、163億円の赤字となりました。その要因はどのように分析していますか。また、株式の分離上場に向けて厳しい状況ではありませんか。