図3筆者作成
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 母が大腸がんに罹患し、手術のため3週間入院、その後6カ月間にわたり、外来で抗がん剤治療を受けた場合の治療費の試算だ。治療費は毎月、高額療養費の限度額までかかったという前提にしたが、他の部位のがんであっても負担額は変わらない。

 母の年金収入は、遺族厚生年金と基礎年金のため所得はゼロ。母が単独の別世帯なので住民税非課税世帯となる。住民税非課税世帯の医療費の限度額はかなり低く設定されており、7カ月間の自己負担の合計額は6万3000円で済む。

 ところが子と同一世帯だと、住民税非課税世帯にはなれないため、所得区分は「一般」となる。7カ月間の治療費の差は10万円を超える。

 なお、食事代の自己負担額は試算に加えなかったが、所得区分「一般」なら1食490円、「住民税非課税世帯1」なら110円だ。手術の前後は絶食だろうから、仮に入院中の食事が50回だとすると、差額は1万9000円にもなる。電卓を叩いてびっくりした。

 最後は介護保険のサービス利用費比較だ。

図4筆者作成
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 母が80歳で要介護度2と認定され、在宅で介護サービスを5年間利用したと想定した試算だ。

 母の所得はゼロなので、介護保険サービスの利用者負担割合は、世帯が子と同一でも、別世帯でも「1割負担」で変わらない。

 要介護2だと在宅介護サービスの支給限度額(月額)は20万円前後だ。仮に毎月18万円分の在宅介護サービスを利用すると、負担割合は1割なので、自己負担額は月1万8000円となる。

 介護保険にも医療の高額療養費制度のような「高額介護サービス費制度」があり、1カ月の自己負担限度額が設定されている。住民税非課税世帯だと限度額は月1万5000円なので、1万8000円支払ったとしても毎月3000円負担が減る(還付される)。

 一方、子と同一世帯の場合は、限度額は月4万4400円となるため、利用料の1万8000円について還付金はない。

 同一世帯と差額は1カ月で3000円なので、80~84歳の5年間での合計は18万円となる。

 要介護度が高くなり、介護サービスの利用が増えると、差額はもっと多くなる。