「時間がなくて、仕事が終わらない」は前提が間違っていると言える理由仕事の見積りが正確なはずはなく、未来の予測はデタラメだと理解していれば、締め切りや時間のことで自分や他人を責めなくて済むようになる(写真はイメージです) Photo:PIXTA
*本記事は本の要約サイト flier(フライヤー)からの転載です。

ToDoリストを完遂するのは良いことだという
前提自体が間違っている

 仕事に行き詰まり、タスクが溢れかえったとき、多くの人は、効率アップのための工夫を求めるものだ。優先度をつけてやるべきことを終わらせようという定番のアドバイスに沿って、ToDoリストを作ったことのある人も多いはずだ。だが、やると決めたリストが全然できなくて自己嫌悪に陥ってしまった経験がある人も少なくないはずだ。

 著者である佐々木正悟氏も、かつては「時間をうまく使う」「仕事のやる気を出す」といったテーマでビジネス書を書いてきた。しかし、本書『「ToDoリスト」は捨てていい。 時間も心も消耗しない仕事術』で著者は、うまく作った計画やタスクリストは実行できるはずだ、それを完遂するのは良いことだという前提自体が間違っているのではないかと問いかける。計画やリストには必ず「期待」や「欲望」が込められる。それがうまく進められないときに必要なのは、計画を練り直すことではない。現実を受け入れることだ。終わらせられた仕事だけが現実に終わらせられる分量なのだから、現実的とはいえない仕事の達成や生活環境を実現しようとする「欲の深さ」は捨てなければならない。

 現代の人々は未来を見据えて生きている。要約者自身も「できる人間」だと思われたいがために、先の未来を考えながら今を生きている。しかし、本書を読んで、未来予知ができるわけでもないのに、将来のことに時間や心を消耗しすぎることは、いささか滑稽だと感じた。不確かな未来に備えるばかりが人生ではない。目の前のことを着実に達成し、そこに喜びを見出すことこそ、豊かな人生といえるのではないだろうか。(Saki Amano)