実は、これには明確な理由がありました。下記はその時、小室氏が語ってくれたインタビューの抜粋です。
>まず、イントロが短い曲ですが、これはCMなどタイアップありきで作った曲がほとんどだと思います。まずCMで流れるところを作って、じゃあ曲にしようって時に、CMで流れるところを歌い出しですぐに聴かせる構成にしたことで、イントロは無しとか、数秒だけイントロを加えて、CMで流れてるメロディに勢いをつけて効果的に聴かせるように作ってましたね。
>『シーブリーズ』のCMソングに決まっていた、安室奈美恵さんの「You're my sunshine」って曲は、はじめ、アップテンポなサウンドで作ってたのですが、クライアントからリゾート気分を味わえるようなゆっくりとしたテンポにしてほしいと、後から言われて。で、イントロ2秒からゆっくりとしたテンポのサビがくるように作り直して、途中からテンポアップするアレンジにしたんです。そういう曲もあるくらい、イントロが短い曲は、タイアップありきだったってことが大きいですね。
>逆にイントロが長い曲は、自分で歌う曲ではなく誰かのプロデュースをする曲が多かったので、アイデンティティというか、自己欲求というか、ダンスミュージックですけど、私はロックも好きですよとか、自分の一番やりたいことや好きなことをイントロに詰め込んでいたというのは、かなりありましたね。それで長くなったんじゃないかな。
90年代の日本の音楽シーンは、CMやドラマのタイアップという宣伝方法が多用されていた時代でした。
新しい楽曲を世に広めるための効果的な手段として戦略的に取り入れながらも、ミュージシャンとして表現したいことはしっかりと作品の中に落とし込む。そのバランス感覚こそが“TKサウンド”がこの時代に成功した大きな要因の一つだったのです。
そしてこの“TKサウンドメソッド”は、他のミュージシャンにも多大な影響を与えることに。GLAYが1997年にリリースし、134万枚のミリオンヒットを記録した「HOWEVER」は、この“TKサウンドメソッド”から誕生した曲だったのです。