社会の変化を映す流行語が、社会を動かすこともある

 毎年生まれる流行語の中には、多くの人の「言ってほしい」を端的な言葉にして表現し、社会を動かした例が見られます。

 例えば「おひとり様」という言葉は、「多くの飲食店が家族連れやカップルなど、複数人での来店を前提にサービス提供していることに、なんとなくモヤモヤする。(女性)一人で飲食店に行ってはいけないのだろうか?店側もそんな一人客は迷惑なのだろうか?」という気持ちを代弁しました。多くの飲食店が「女性おひとり様での来店もお待ちしています」というメッセージを発信することで、人々の行動に変化をもたらしたのです。

 また「ソバーキュリアス」は、「体質的にお酒が飲めて、体調も問題ないなら、飲むのが当然という雰囲気になんとなくモヤモヤする」という気持ちに応える言葉となりました。「体質的に飲めても、お酒を飲まないライフスタイルを選んでもいい」という社会の承認を示す言葉として機能し、新しい生活様式を後押ししたのです。モクテル(ノンアルコールカクテル)を提供する飲食店が増えたのも、こうした言葉の普及と無関係ではありません。

お酒を飲めるがあえて飲まない「ソバーキュリアス」という言葉が広まり、そうしたライフスタイルが定着しつつあります Photo:PIXTAお酒を飲めるがあえて飲まない「ソバーキュリアス」という言葉が広まり、そうしたライフスタイルが定着しつつあります Photo:PIXTA

 このように「流行語」には、人々が言葉にできない「言ってほしい」を代弁する、時には社会を動かすこともあるという重要な側面があるのです。