「言ってほしい」こと=インサイト、人を動かす隠れたホンネ

 赤城乳業の成功は、新商品やサービスの開発によるものではありません。値上げという本来ならネガティブなニュースであっても、ガリガリくんのファンの心の中に隠れていた「言ってほしい」を言語化したことで実現したのです。

 ファンや世間の気持ちが大きく動いた背景には、「変化の多い世の中ではあるが、小さな頃から慣れ親しんだガリガリ君には、できれば変わらないでほしい。やむを得ず変わるのであれば、そのプロセスや葛藤も伝えてほしい」という思いがあったのでしょう。つまり、赤城乳業への隠れた本音は、「いつまでも、誠実さと愚直さを堅持してほしい。その姿を見て自分たちも勇気づけられたい」ということだったのかもしれません。

タモリの名言、ガリガリ君「やめるのをやめた」…頭のいい人が知っている、人を動かす“ホンネ”の見つけ方『センスのよい考え方には「型」がある』佐藤真木、阿佐見綾香(サンマーク出版)

 このような「言ってほしい」を明確な言葉にする能力は、必ずしも生まれ持ったセンスの問題ではありません。これは正しく練習すれば、誰にでも身につけられるスキルです。一見センスの良く見える人の考え方には、実は誰にでも実践できる方法論、つまり「型」があるのです。

 マーケティングや広告の世界では、この「言ってほしい」を「インサイト」と呼んでいます。インサイトの定義は様々ですが、本質的には「人を動かす隠れたホンネ」と言えます。ここでの「隠れた」という点が重要です。本音には、いわゆる本音と建前のように、自分で認識できている「ホンネ」もありますが、人を動かす上でより価値があるのは、自分では言葉にして自覚できない「隠れたホンネ」なのです。

 拙著『センスのよい考えには、「型」がある~感覚を言語化するインサイト思考~』では、これまで個人の資質の問題とされてきた「インサイト」の発見方法を、「出世魚モデル」という5つの思考ステップと、さらにシンプルな「逆説モデル」として整理しています。誰にでも実践できる再現性の高い「型」として、丁寧に解説していますので、「言ってほしい」を言語化して人を動かしたい方は、ぜひ参考にしてください。