物価が上昇したのに成長率は上がらず
日銀「多角的レビュー」は“大甘の総括”!?
日本銀行は、これまで10年以上の期間にわたって「2%物価安定目標」を掲げて大規模金融緩和政策を行ってきた。その目的は、消費者物価(生鮮食品を除く総合)の対前年同月比を2%に引き上げることとされた。
これは簡単に言えば、物価が上昇すれば、日本経済の基本的な問題が解決されるという考えだ。
この政策の導入以降2022年3月までは、消費者物価上昇率が2%まで上昇することはなかったので、この考えが正しいかどうかを検証することができなかった。しかし22年4月から、消費者物価指数は著しく上昇し、対前年上昇率は、継続的に2%を超えるようになった。
だから、日銀の目標は達成されたことになる。日銀の考えが正しいとすれば日本経済のパフォーマンスは改善されたはずだ。では、実際に日本経済の状況は改善したか?
23年から24年の直近1年の自国通貨建て実質GDPの成長率を見ると、アメリカの2.8%、韓国の2.5%に対して日本は0.3%でしかない。
日銀は12月19日に公表した「多角的レビュー」で、物価目標実現を目指して続けてきた大規模量的緩和などの非伝統的金融政策について、「日本経済にはプラスの影響が大きい」と総括したが、経済成長の現実や国民の実感とはまったく違うものだ。
19~24年の実質成長率1.6%
米国12.5%、韓国10.9%をはるかに下回る
直近の経済状況をIMFのデータで比べると、アメリカや韓国をはじめ多くの国が高い成長率を示しているのに対して、日本はほぼゼロ成長だ。
19年から24年の5年間の成長率を見ても、アメリカが12.5%、韓国が10.9%に対して、日本はわずか1.6%だ。日本の5年間の成長率が、米韓の1年間の成長率にはるかに及ばない。日本の成長率の低さは異常としか言いようがない。