日銀の緩和政策を総括した多角的レビュー
疑問視も「全体としては日本経済にプラス」
日本銀行は12月19日、「金融政策の多角的レビュー」の結果を公表した。
これは日本経済がデフレに陥った1990年代以降の25年間の物価や経済、金融情勢の下での金融政策運営をレビューし、国債買い入れによる量的緩和策などの非伝統的政策の効果や2%の物価安定目標の是非などを総括したものだ。
レビューでは、名目政策金利がゼロまで低下するなかで実質金利を下げるために行った日銀による大量の国債買い入れや物価目標導入によるインフレ期待への働きかけについては、「当初、想定したほどの効果は発揮しなかった」とし、また国債買い入れによる国債市場の機能低下などの「副作用」にも言及した。
だがその一方で、マクロモデルを使っての試算を示し、異次元緩和政策を始めた2013年度以降の消費者物価指数を年平均「0・5~0・7%pt」、実質GDPを「1.3%~1.8%pt」それぞれ押し上げたとして、「現時点では、全体としてみれば日本経済にプラスの影響」と総括した。
ただそれでも、「副作用が遅れて顕在化するなどのマイナスの影響が大きくなる可能性には留意が必要」としている。
非伝統的金融政策には、これまでも市場や経済界などでもさまざまな評価や批判があったが、功罪を可能な限り客観的に示そうというレビューの姿勢や、この総括をもとに政策の効果と課題が市場関係者などにも共有されることの意味は大きい。
とはいえ、副作用を是正するための具体策は必ずしも明確ではではなく、将来に非伝統的金融政策を再度活用する場合の難しさを示唆したものとなっている。