ロールス・ロイスの「公認運転手」
運転はさすがに上手だった!

 筆者は以前、ロールス・ロイスの後席試乗をしたことがあります。運転してくれたのは、ロールス・ロイスの公式ショーファー(運転手)スクールを卒業した人でした。乗り込んでしばらくは会話を楽しんでいましたが、あまりの快適な運転にあっという間に寝落ちしてしまいました。さらに素晴らしかったのは、目的地に着いた瞬間。夢の中にいた私は、声を掛けられることもなく、到着した感じを悟ってフッと目を覚ましていたのです。これぞ、まさにプロの運転手の仕事だと脱帽しました。

 ところで海外では、ウーバーやグラブといったアプリを使ったライドシェアサービスが一般化してきました。筆者は、日本もこの制度に移行すべきだと考えています。

 ライドシェアでは、各ドライバーに対してユーザーが口コミ評価をします。この仕組みがあれば、ドライバーの質は自然と上がり、質の悪いドライバーは淘汰されるでしょう。

 最初は、ライドシェアよりもタクシーを使いたいというユーザーはいるので、タクシーは残るでしょう。しかし、タクシーがライドシェアよりも価値のあるものでなければ、存在意義がなくなるはずです。それこそ、公認スクールを卒業したドライバーのみが運転しますといった、サービスの差別化が必要になるに違いありません。

 タクシーというサービス自体が、クルマが超高級品だった時代のレガシーと考えるべきです。その昔は、マイカーを持つこと自体が高嶺の花でした。

 現代では、タクシー会社の経営者の所得と、その会社に所属するドライバーの所得に、あまりに大きな格差があります。だから、タクシー運転手の多くが、個人タクシーを目指します。しかし、10年以上プロ運転手の経験があることなど条件が厳しく、そもそも新規の営業許可は総量規制により原則として認められていないなど、個人タクシーのドライバーになるのは非常に難しいのが現実です。

 新規参入に高いハードルを設けて、規制で縛っているタクシーというビジネスモデル自体が、もう古いと思いませんか? (1)タクシーの多くがライドシェアサービスに移行する、(2)会社組織に所属したい人のみタクシー会社に所属する(3)どうしてもライドシェアは利用したくない人を相手にビジネスを展開する――。この流れがあれば、先述した自然淘汰で、運転の上手なプロドライバーが増えると思います。要は、自由で公平な競争が必要なのです。