SAPIXの広野雅明先生に「中学受験の素朴な疑問」をぶつける連載。長年にわたって、多くの学校を自身の目で見てきた広野先生に「評判以上に満足度が高い中高一貫の女子校」を4校挙げてもらった。より多くの人が「自分に合う学校」を見つけられるように、特徴が異なる学校を紹介する。「学校選び」の参考にしてほしい。本稿は、近年伸びている女子校の特徴を解説するところから始まる。(聞き手・文/教育アドバイザー 鳥居りんこ)
伸びている女子校
「2つの共通点」
現在、伸びている女子校の多くは、学校での勉強を中心に大学受験で確実な成果を出している学校です。
昨年度より「医進コース」を設置し、医学部や難関大学の理系学部を目指す生徒をさらに支援しようという学校のメッセージを伝えた埼玉県の淑徳与野は、非常に人気があります。都内で注目されている鴎友学園女子や吉祥女子、田園調布や神奈川県の洗足学園なども同様で、学校全体で生徒を支え、成果を上げる女子校が評価されているのは事実です。
さらに、女子校が伸びているもう1つの理由として、理系アレルギーを軽減している点が挙げられます。数学や理科への抵抗感を減らす環境が整っているのです。
統計的に見ても、中学受験では算数や理科が得意な生徒に男子が多いのは否定できません。しかし、女子だけの環境では、理数系分野で突出した男子に圧倒されることがないため、「置いていかれる」という不安が少なくなります。
また、先生方はじっくり順序立てて考えたり、数学の定理から着実に理解したがったりする女子生徒の頭の中を理解し、それに合わせて授業をするため、結果として数学や理科が苦手になる生徒が比較的少ないのです。
こうした環境は、理系志望の選択肢を広げることにもつながります。「私、理系の〇〇大学に行きたい!」と、自信を持って目標を掲げやすいのです。実際、理系大学や学部への進学率を見ると、共学校に比べて女子校のほうが女子の入学者数が多い傾向があります。
これは、前述のように、理数嫌いを防ぐためのノウハウが蓄積されていることが要因の1つであり、女子校の大きなアドバンテージといえるでしょう。もちろん、別学と共学のどちらが良いかというのは一概に言えません。しかし、中学段階においては、女子だけの環境で数学や理科を学ぶことには一定のメリットがあると感じます。
その一方で、英語の授業を中心にグローバル教育を重視する学校、伝統的な日本文化である茶道、華道、礼法などの特別講座を数多く実施している学校、多様な高大連携を通して、一般受験だけではなく総合型選抜や学校推薦型選抜で難関大学に進学させている学校もやはり人気があることも間違いありません。
重要なのは、私学がそれぞれに独自性を持っている点です。ある学校がある子にとっては第一志望でも、別の子にはそうではないこともあります。最も大切なのは、お子さんと一緒に学校を訪問し、「ここならばわが子は成長できる」と感じられる環境を見極めることです。