*本稿は、現在発売中の紙媒体(雑誌)「息子・娘を入れたい会社2025」の「Visionary Leader 『多様性の時代』生き方、働き方」を転載したものです。

企業でも個人でも多様性がますます尊重される時代に入っていく中で、どのように生き、働いていけばよいか、経験豊かな5人のプロフェッショナルに聞いた。4人目は、スキマバイトサービス「タイミー」を大学時代に立ち上げた起業家小川嶺氏。学生時代の大きな挫折を経て、いかに「本当にやりたいこと」に巡り合ったのか。(取材・文/柳本 操 撮影/平松唯加子)

人間いつ死ぬかわからない
やりたいことは今やろう

「働きたい時間」と「働いてほしい時間」をマッチングするサービス「タイミー」は、「『働く』を通じて人生の可能性を広げるインフラをつくる」を企業ミッションとする。創業から6年で利用者は約900万人、登録事業拠点は29万7000以上(2024年11月時点)に。このタイミーを率いるのが、27歳の小川嶺氏だ。 

バイト漬けの日々で生まれたアイデア。タイミー社長・小川嶺氏が実践する「自分に変化を起こす方法」とはタイミー代表取締役 小川 嶺氏

 起業家を目指したのは、18歳のときに尊敬する祖父が亡くなったことがきっかけだったという。

「人間いつ死ぬか分からない。やりたいことは今やろうと思ったこと、当時生徒会長を務めていてチームづくりや予算を取るプロセスが楽しいと思っていたことがつながり、起業したいと思いました」

 フェイスブックでインターン生を募集している企業に「入れてください」とダイレクトメールを送り、飛び込んだ先は、トリマーと飼い主のマッチングサービスで起業した会社。ツイッター(現・X)アカウントを作り、トイプードルの言葉で日々発信する作業を受け持つことになった。トイプードルの歴史や飼い主の年収分布、属性を調べ、どういうツイートが刺さるかを試した。

「面白かったですよ。いかに角度を変えて物事を楽しめるかが、仕事の醍醐味だと感じました」

 そんな小川氏は大学2年生のときに「人生の中で最大の挫折」を経験する。アパレル関連事業「Recolle」を起業し、500万円の資金調達を目前にした段階で事業を断念したのだ。