そう聞くと、「パンを主食とする欧米の人の脳の働きが日本人に劣るのか?」という疑問がわいてくるかもしれません。ですが、そんなことはありません。ご飯とパンの違いはどこにあるかというと、主に食物繊維量です。
米は糖質だけでなく食物繊維も多く、ゆっくりと血糖値を上げてスタミナや集中力が長く保たれます。一方、食パンなどの日本に多い精製度の高いパンではほとんど食物繊維がとれません。
そのため、ブドウ糖を直接摂取したときとほぼ同様の血糖値の上昇が見られ、しかも急激に血糖値が上がって下降するのも早く、すぐエネルギー不足の状態に陥ってしまって脳の作業効率も一気に落ちます。
脳の作業効率を持続させるためには、長時間にわたってエネルギーを補給して、血糖値の上下動をなだらかにする必要があるのです。
白米も精製度が高い食品ですが、食パンに比べると血糖値の上昇は70%くらいにとどまります。欧米で好んで食べられているパンは精製していない全粒粉や、胚芽を残した粉を使っていて、食物繊維を30%ほど含んでいますから、日本の食パンを食べたときのような血糖値の急激な上下動は起こりません。
それでも朝はパン派という人に
おすすめの食べ方
また、ヒトの身体は何世代にもわたって食べてきたものに順応し、変化します。日本人は長年米を主食としてきたので、米からとった栄養を消化、吸収、代謝する力に優れています。しかし、小麦に対しては恒常的にたくさん食べると腸が炎症を起こす人もいます。
こうしたことから、朝食の主食はご飯をおすすめします。ご飯に納豆やみそ汁を合わせれば、タンパク質やビタミンB群、リジンがとれます。みそ汁に野菜をたっぷり入れれば、ご飯以外にも食物繊維がとれてビタミンも追加できます。
川島隆太 著
こうして、ご飯の朝食がよいと結論づけておきながら、じつは、私は幼少時から朝食の主食はパンで育てられてしまったこともあり、多くの研究成果を知った今でも、朝食は曲げずにパンです。出張先のホテルのバイキングでも、カレーがあるとき以外は絶対にパンです。子どもの頃からの生活習慣は、理性や知性の力で簡単に変わるものではありません。
そこで、以下の策をパン食派の同志にお伝えしたいと思います。
・パンだけでお腹がいっぱいになることは絶対に避ける
・卵やハム・ソーセージなどのタンパク質を一緒にとる
・サラダや野菜入りのスープなどで繊維質を補充する
・血糖値の急上昇を避けるべく、野菜類を先に食べるようにする
・可能なら白いパンを避け、全粒粉のパンを食べる