朝食を食べている子と食べない子では脳の働きに差が出る――。それは調査の前に私たちも予想していたことでした。
そこで、どんな内容の食事が脳にいいのか調べるため、次は大人を対象とした心理学実験を行いました。同じ大学生に、朝食を食べない日、糖質だけの朝食を食べる日、栄養バランスのとれた朝食を食べる日を設定し、それぞれの日の午前中に記憶力のテストをMRI装置の中で行ってもらいました。
その結果、栄養バランスのとれた朝食をとった日は成績もよく大脳もより活発化していたのに対して、糖質しかとっていない日は、朝食を食べない日と同様に成績も悪く脳活動も上がりませんでした。
理想的な朝ごはんは
一汁三菜の和食
そこで改めて、身体に取り込んだ栄養素がどのように使われるのか、栄養学の観点から見直してみました。わかったのは、脳が栄養として使えるのはブドウ糖だけですが、食事で糖質だけをとってもビタミンB群や必須アミノ酸のリジン、脂肪酸のα‐リポ酸といった栄養素の補助を受けないと、脳で効率よくブドウ糖を使うことができないということでした。
こうした栄養素は肉や大豆といったタンパク質に多く含まれます。ですから、朝食ではご飯やパンといった糖質だけでなく、タンパク質を含んだおかずも食べることが脳をよく働かせるためにも大切なのです。
長年朝食をとっていなかった人が、中高年になってから急に食べるのは大変かもしれませんが、加齢により脳の機能が落ちていく状態で、さらに朝、栄養がチャージされないと頭の働きがさらに低くなる可能性が高いです。大人も、朝食、そして昼食もバランスよくとらないと終日ぼんやりしてしまいますし、やる気も起きません。忙しかったとしても、少しでも食事をとるよう心がけましょう。
内容としては、炭水化物と卵や大豆、肉類などのタンパク質、それに野菜や果物を添えると理想的です。そう、一般的によいと言われている一汁三菜の和食が理にかなっているのです。
もちろん、朝からそんなに考えられないという人もいるかもしれませんが、前日の夕食に具沢山のみそ汁を多めにつくっておいたり、漬物を添えたり、卵かけご飯や納豆ご飯にするなど、うまく手を抜きつつできる範囲で習慣にしていってください。
朝食はパンよりも
ご飯がいい理由
ちなみに、朝食にはパンとご飯のどちらがいいかというと、ご飯を中心とした食事をおすすめします。子どもたちの脳を調べたところ、朝食で主にご飯を主食としている子どもたちのほうが、パンを主食としている子どもたちよりも、大脳皮質や基底核領域の体積が大きく、また知能指数も高い傾向があったのです。