マイクロマネジメントの向き・不向き
私は3年ほど前まで雑誌プレジデントの編集長を務めていた。部下の人事評価については色々と考えることも多かった。編集部員の仕事ぶりは誌面に反映されるため、10年以上プレジデントを制作してきた経験から、その人物の実力や取材内容は完成品を見れば理解できると考えていた。
プロセスにはあまり口を出さず、結果を重視する姿勢をとっていた。雑誌の売れ行きは特集テーマとタイトルでほぼ決まるため、誌面の完成度に多少のばらつきがあっても目をつぶる方針を取った。方向性を共有する程度で十分と考え、詳細な指示を控えていた。
編集部員の評価は、主に提案される企画と誌面での実績に基づいて行われた。インタビューやスクープなどの成果物が誌面を飾れば、それに応じて仕事量が増える仕組みであった。
マイクロマネジメントは避け、こなしたページ数を確認することで仕事の質を測る方法を採用していた。評価基準を明確にすることで、編集部員のモチベーションを保ちながら業務を進めていたわけだ。
他方、かつて高収益であったプレジデントの強みは広告収入にあった。プレジデントの広告営業は出版業界で積極的かつアグレッシブな姿勢で知られていた。広告営業の強みが雑誌全体の成功を支える重要な要素となっていたのだ。職種特有の困難があり、編集部の取材活動とは性質が異なっていた。
編集部の取材は喜ばれる場面(批判記事であっても、それを喜ぶ人は一定いる)が多い一方で、広告営業は迅速な収益化が求められ、厳しい環境であった。広告主との交渉や提案、値引き要請など細やかな対応が必要であり、調整能力が求められる職務であった。
営業部では上司と現場が一体となって動き、細部まで徹底的に管理されていたようだ。日報の提出が求められるなど、編集部とは異なる文化が存在していた(編集部では誰が何をしているのかさっぱりわからない。ホワイトボードには嘘ばかりが書いてあった)。