監視で「やる気」が奪われるケースも
もう1つは抑制効果である。抑制効果は、監視が強まることで働く側が「自分は信頼されていない」と感じ、やる気が下がってしまうことである。
こちらは、信頼を重視する関係や、働く側が自分の意見や判断を大事にしている場合に発生しやすい。監視によって働く側が「自分の評価が下がった」と思ったり、「自分の自由が奪われた」と感じたりすると、やる気がさらに失われることがある。
管理する側が効果的に働く側をサポートするには、状況に合わせて監視の方法を変える必要がある。働く側の気持ちや関係の特徴を理解しないと、かえって悪い影響を与える場合がある。
同理論をもとに、1985年にオランダで行われた調査では、中規模企業の管理職116人が対象となった。従業員数が数百人から3万人を超える企業が含まれ、さまざまな業界が対象となっている。研究は、監視(チェック)と労働努力の関係を明らかにすることを目的として行われた。
研究では、親会社が子会社の管理職をチェックするケース、子会社の経営者が管理職をチェックするケースで効果がはっきりと分かれた。
モニタリングを行う人が誰であるかによって効果が変わることが分かった。
親会社がチェックを行う場合は、親会社と働く人の間には個人的な感情が関わりにくい。このような状況では、チェックを強化すると労働努力が増える規律効果が強く現れる。チェックが強化されると、労働時間が増える傾向が統計的に確認された。
最高経営責任者(CEO)が管理職に対してチェックを行う場合は、個人的な関係が強いと考えられる。管理職とCEOの間には信頼関係が重要になるため、チェックが強化されると抑制効果が働いた。これにより、労働努力が減る傾向が見られた。統計的にも、負の影響がはっきり示された。
研究では、働く人の努力にチェックが与える影響は、状況によって大きく変わることが明らかになった。