日本国内でのプライベートエクイティ(PE)ファンドの台頭を受け、コンサルティングファームなどで経験を積んだ人材が、次の職場としてPEファンドを選ぶ動きが出ている。では、PEファンドで生かせるコンサルタントのスキルとは。また、転職によって待遇はどう変わるのか。『コンサルが「次に目指す」PEファンドの世界』の著作があり、PEファンドへの転職を数多く支援してきたアンテロープキャリアコンサルティングの小倉基弘代表取締役と山本恵亮取締役に解説してもらった。長期連載『コンサル大解剖』の本稿では、前編として、両氏がPEファンドに向くコンサル人材像や、PEファンドで生かせるコンサルのスキルについて解説。PEファンドへの転職での具体的な採用ルートや選考プロセスについても明かしてもらう。
日本でPEファンドに存在感
コンサルの次に目指すキャリア!?
PEファンドは、最近では東芝へのTOB(株式公開買い付け)による数兆円の買収を実施するなどその影響力は大きくなっています。日本国内でPEファンドによる投資案件数が右肩上がりで伸びる中、PEファンドの大手には人員体制の拡大の動きも出ています。
米国のPEファンドの歴史を振り返ると、当初はM&A案件の経験者が主なメンバーでした。ただ、組織拡大に伴って、コンサルティング業務の経験者を、投資前の事業性評価(ビジネスデューデリジェンス、BDD)および投資後の経営支援(バリューアップ)などの担当者として招き入れ、採用を拡大していきました。日本でも同じ流れをたどっていくとみられます。
PEファンドの仕事は「知的総合格闘技」と称されます。コンサルタントとしての経験だけでなく、事業経験、ファイナンシャルアドバイザリー経験など複数のスキルを持つことが求められるからです。
実は、コンサルティングファームの経験者にとって、PEファンドは次に目指すべき、魅力的なキャリアパスといえます。しかも、専門性と汎用性のある知見を兼ね備えた人材という観点で、コンサルタントとPEファンドの投資担当者のキャリアパスはつながっているのです。
コンサルタントの場合、クライアントへの良い提案が必ずしも採用されるわけではありません。他方、PEファンドでは、担当者が問題解決のためにアクションを取ることができます。つまり、「提案」にとどまらず「解決」することがPEファンドの特徴といえます。そうした観点でも、コンサルからPEファンドへの転職の希望者は出てきています。
PEファンドの業務を簡単におさらいしておきましょう。全体の流れとしては、投資資金を集め、投資先企業を探し、投資を実行。企業価値向上を支援し、次の株主に株式を売却します。具体的には(1)「ファンドの資金調達(ファンドレイズ)」(2)「投資先企業の探索(ソーシング)」(3)「投資の検討・実行(エグゼキューション)」(4)「投資先企業の支援(バリューアップ)」(5)「投資先企業の売却(エグジット)」―の5段階です。もちろん、PEファンドごとに投資哲学や投資方針などは異なります。
では、コンサルタントからPEファンドに転じるにはどのような道をたどればよいのでしょうか。次ページでは、PEファンドへの転職を可能とする業務経験や求められる具体的なスキルについて明らかにします。また、採用ルートや、一般的な選考プロセスについても解説していきます。選考にあたって事前に必要な準備とは。