CM差し止めはできても
再開するのが難しいワケ
17日の会見後、トヨタ自動車をはじめとする大手スポンサー企業が次々にCM差し止めを決定しました。問題の発覚からかなり迅速な決定だと思いますが、即断できた背景には、ジャニーズ問題の経験・教訓があるのだと思います。
性加害疑惑や性に関するトラブルが報じられたときに世論がどう動くのか、そしてスポンサーである自社がどう責められるのか、を経験している。だからこそ、今回の問題に関して、迅速な判断ができたのではないでしょうか。「刑事事件にもなっていないが、止める判断をしていいのか」などの議論もジャニーズ問題のときにすでに行っており、前例に沿った判断がしやすくなっていたはずです。
また、テレビ広告を出すような大手企業であれば、社長会見などで「競合のA社はCMを差し止めましたが、御社の対応は?」などと聞かれることもあるでしょう。スポンサーを続ければ、自社が批判される可能性がある。フジテレビのために余計なリスクを背負いたくない、というのが企業の本音だと思います。
では、こうして離れたスポンサーは、どうすれば戻ってくるのか。
ここからが、フジテレビにとってのいばらの道です。
広告主からすれば、広告を再開する理由の説明責任が生じるわけです。CM放映を止める際には、「総合的に判断して」とか「フジテレビから納得できる説明があるまで」とか、理由を見つけやすいのですが、再開するときの説明は難しい。それによって企業がたたかれない、中途半端に突っ込まれない、まさに「ぐうの音も出ない」理由が用意できなければなりません。
フジテレビに
スポンサーは戻ってくるのか
フジテレビの第三者委員会がやり過ぎなくらいの徹底的な調査を行い、関係者には極めて厳しい処分を下して、初めてスポンサー企業が戻ってくるための土壌が整います。
例えば、2004年、顧客情報の流出が問題となったジャパネットたかたは、再発防止策を徹底するため49日間にわたって営業を停止しました。この大胆な決断と実行は、「危機管理のお手本」といわれています。そのくらい「そこまでやるの!?」という姿勢を見せられなければ、批判の声は続くでしょう。
ただ、そこまでの徹底した調査ができるのか、懸念が残ります。第三者委員会は3月末に調査報告書を提出するとのこと。発表が1月23日、準備や報告書にまとめる期間などもあるとして、調査期間は実質的に1カ月ほどになるのではないでしょうか。
フジテレビとしては、6月の株主総会を見越して、3月末に調査結果を受け取り、その結果をもって4~6月でスポンサー企業に頭を下げ、7月にはなんとか戻ってきてほしい……というシナリオを描いているのかもしれません。
しかし、この短期間で、ステークホルダーが納得できるような徹底的な調査ができるのでしょうか。調査結果公表後に、新たな問題が明るみに出る可能性も否定できません。
いずれにせよ、フジテレビにとって、離れていったスポンサーを呼び戻すことは容易ではないのです。