では説明を始めましょう。パナソニックHDは今回の経営改革を通じて低収益事業の売却ないしは再建、人員削減を伴う生産性向上を行い、2028年度に3000億円以上の収益改善を達成することを目標にしています。営業利益が3500億円前後の会社ですから、ほぼ利益倍増を目標に掲げた形です。

 グループ全体としてはソリューション分野に経営資源を集中します。その一方で低収益事業を見極めて、成長を見通せない「課題事業」は2026年度末までに一掃する方針を示しました。この「課題事業」に分類されるのがテレビ、キッチンアプライアンス(調理家電)、メカトロニクス事業、産業デバイス事業の4事業だと明示されています。

 低収益事業にはもうひとつ、再成長の可能性がある「再建事業」というカテゴリーがあります。家電事業全般がこのカテゴリーに入ります。

 さて、この目標を目指すうえでパナソニックHDは事業会社の組織再編を行うと言いました。パナソニックグループの中核であるパナソニック株式会社は、家電の「スマートライフ」、空調などの「空質空調・食品流通」、照明の「エレクトリックワークス」(それぞれ仮称)の3社に分社化されます。

 ここがわかりにくいところです。課題事業であるテレビと調理家電は一掃するのかと思いきや、再建事業であるそれ以外の家電事業ともどもスマートライフ社に集約するのです。白物・黒物、国内販売部門まとめてひとつに集約すると宣言したのです。

 さらにわかりにくいことには、再建事業全体の売上高は約2兆4000億円とされていますがそこにはわざわざ「キッチンアプライアンス・テレビ含む」と明示されています。記者会見を聞いている側は「いったいぜんたいテレビはなくなるのか(課題事業?)なくならないのか(再建事業?)どっちなんだ?」と混乱するわけです。

 そこで説明させていただくと、これがまさに日本の伝統的大企業が培ってきた「玉虫色」という経営技術のたまものなのです。