最近の就活生はZ世代などと呼ばれ、テレビに興味がない子もたくさんいます。しかし、テレビでなくても様々な映像配信サービスは利用している世代ですから、メディアの現場の人間とは全然違う発想が出てくるはずで、私もこの青年の発言にはなるほどと思いました。しかし、やはりフジテレビの面接では、せっかく考えたこうしたアイデアも、聞かれることはなかったと言います。
「さんまの活躍を予言」「辞めてから役者に」
かつて現場にいたテレビを元気にする人々
フジテレビはもともと、人を驚かせる番組作りをやってきた会社です。私は、以前からフジテレビには不思議な縁がありました。1980年代に『オレたちひょうきん族』が大人気だったころに担当プロデューサーの横澤彪(たけし)さんが唱えていた「新人類と若者をバカにしているが、ミーハーこそこれからの時代を作っていくんだ」という持論に興味を持ち、『月刊文藝春秋』に寄稿していただきました。
そのとき横澤氏は、「いやあ、私の首が繋がったのは、文春さんのお陰なんです」と意外な話を始めました。当時、「俺たち……」はさすがに破天荒すぎて局内でも問題になり、番組をやめるという話が出たものの、固いことで有名な『文藝春秋』が番組を見学して、ルポを掲載してくれたというのです。
経営幹部も「文春が注目するなら」という理由で、あの番組は残ったそうです。以降、横澤さんとお付き合いが始まり、「次のスターは明石家さんまだ」と教えてくれたこともあります。「さんまは、舞台だと全然面白くないけど、楽屋での内輪受けの話が目茶苦茶面白いんです。ですから、楽屋でやっている楽屋落ちをテレビでやらせるつもりです」という横澤さんの予言は、まさに当たりました。
本社がお台場に移った後、今度は当時のドラマ部門のトップであった山田良明さん(編成制作本部広報局長のときに知り合いました)に密着する企画もやりました。彼の奥様は動物カメラマン。妻がずっと海外を回っているので、自身が娘の弁当を毎日作って学校に送り出すのが日常という、「性上納」とは縁遠い人柄で、実際『北の国から』『白線流し』などの本格ドラマを手がけ、坂本裕二氏、野島伸司氏、野木亜希子氏といった若い脚本家をどんどんデビューさせました。