彼女が考えた取り組みとは、次のようなものです。

「現時点で単にクライアント回りをしても広告は戻らないし、第三者委員会の結論が出るまで、何もしないでただお詫びをしていても効果はないと思います。フジテレビの営業と番組編集の関係はわかりませんが、営業志望の私としては、『フジ社員が全員でフジテレビの存在意義を考える番組』を作って放送したらいいと思います。

 たとえば、3月はほとんどの時間を使って、かつての名作のディレクターズカット版と、それらの作品に関係した脚本家、監督、俳優、スタッフ、当時の役員らが語る裏話を紹介する番組を放送し続けます。

『北の国から』『白い巨塔』『笑っていいとも!』『東京ラブストーリー』『料理の鉄人』『踊る大捜査線』『ちびまる子ちゃん』『はねるのトびら』『トリビアの泉』『クイズ!ヘキサゴン』『電車男』『のだめカンタービレ』『プロポーズ大作戦』――。私や家族が好きだったドラマやバラエティ番組が、フジには山のようにあります。当時のテレビの常識を変え、他局がこぞって真似する番組が続出した作品のディレクターズカット版を放送すれば、今のようなACのCMだらけで、明らかに制作費も厳しい状況で作られている番組より、視聴者が興味を持ち、フジの存在意義を思い出してくれるはずです。

 しかも、なかなか聞けない製作の裏話や監督の解説、あるいは亡くなった俳優の当時のインタビューなどを一緒に流せば、朝の『めざましテレビ』以降にオンエアされている番組より絶対面白いし、社員も若手も全員「フジテレビとは何なのか」を考えるチャンスになります。

逆転の発想でスポンサーに提案
「フジテレビの改革を応援して」

 そして、たとえば『踊る大捜査線』のとき、多くのCMを放送していた代表的な企業に対して、安い料金で1社提供にして、「これはあくまでもフジの改革のための番組です」とセールスするのです。心あるスポンサーなら、フジテレビの決意を絶対わかってくれるし、相手さえ承知してくれるなら、「なぜこの番組のスポンサーになったのか」を、その企業の広報部長や宣伝部長に出演して語ってもらっても構わないと思います。

 さらに、そのCM料金の10%程度を能登半島の被災者に寄付するくらいのことも宣言する。そうやって、3月に第三者委員会の結論が出て、会社の新体制を発表するまで時間稼ぎをしながら、社員全員の教育・研修にもなるイベントとして、全社をあげて取り組んだらどうでしょうか。いずれにせよ、第三者委員会の結論が出るまでは、いくら動いても結果はなかなか出ません。これくらいの冒険が必要だと思います」

 よく考えられた名案だと思いましたが、残念ながら、実際のフジテレビの面接では、こういう質問がまったく出ないまま終わってしまったそうです。