厳しい指導か?パワハラか?
「ハラスメント型」マネージャー
まずはハラスメント型。近年、職場でのハラスメントに対する意識は確実に高まっています。多くの企業でハラスメント防止の施策が講じられ、研修も実施され、ハラスメントという意識付けは浸透しています。しかし、実際の現場では「そんなつもりはなかった」とばかりにハラスメント行為を繰り返す人が後を絶ちません。
特に難しいのが、厳しい指導とパワハラの境界線です。同じ言動であっても、ある会社では「愛の鞭」として評価され、別の会社では明確なパワハラとして問題視されるということが起こり得ます。パワハラかどうかの判断は、厚労省が定めた「パワハラの6類型」という基準があるものの、実際には、企業文化による部分が大きく、判断が難しいところです。特にマネージャー職ではこの問題は顕著になります。
メンバーが仕事で遅れを出したとき、その対応は様々です。問題の本質を理解しようとせず、ただ厳しく叱責するだけの上司。遅れの原因となっている部分に具体的な手助けをすることなく、精神論だけで追い込んでいく上司。あるいは、困っているメンバーがいても、チームの他のメンバーへの相談や協力を認めず「自分で何とかしろ」と突き放す上司。
大きな仕事を進める中で、メンバーとの意見の食い違いは必ず生じるものです。しかし、ハラスメント型の上司は、そうした意見の違いを建設的な議論の機会とせず、威圧的な態度で自分の考えを押し付けようとします。
こうした上司の下では、メンバーは次第に萎縮し、新しいことにチャレンジする意欲を失っていきます。些細なミスを過度に責められることを恐れて、必要最小限の仕事しかしなくなる。上司の機嫌を伺いながら、できるだけ目立たないように過ごすようになる。
結果的に、メンバーは最初から相談や告発を諦めてしまうこともあります。というのも、ハラスメントを行う上司の多くは、より上位の管理職には丁寧な対応を心掛け、良好な関係を築いているからです。部下たちの訴えはなかなか経営層まで届かないという構造的な問題も生じやすい。
また、ハラスメント型の特徴として、本人の無自覚さが挙げられます。長年のキャリアの中で培われた「これが正しい指導方法だ」という確信は、容易には揺るぎません。自分の部下から優秀な人材が育ったという自負があれば、なおさらです。そして、部下が離職していっても「最近の若い人は根性がない」「プレッシャーに弱い」と、原因を相手に求めてしまいがちです。