
大阪で高校の授業料無償化による「公立離れ」が起こっている。関西では公立の進学校に通って国公立に進学するのが王道とされてきただけに、私立エスカレーター校にとっては千載一遇のチャンスが到来だ。少子化が加速する中、チャンスを物にして関西のエスカレーター校で生き残るのはどこなのか。特集『エスカレーター校 クライシス』(全15回予定)の#10では、「関関同立」(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学)や「産近甲龍」(京都産業大学、近畿大学、甲南大学、龍谷大学)などを擁する関西の学校法人について、偏差値など表の情報からは分からない「裏・成績表」を大公開する。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)
高校の授業料無償化で「公立離れ」
関西の私立に千載一遇のチャンス
自由民主党、公明党、日本維新の会の3党は2月末、高校の授業料無償化について正式に合意した。これにより所得制限のない無償化が始まる見通しだ。この4月からはまず年間11万8800円の支給に対する所得制限が撤廃される。26年4月からは所得制限のない支給の上限額を年間45万7000円まで引き上げる。要は私立高校の授業料もカバーできるレベルになる。
所得制限のない無償化は、東京と大阪で先行している。その東京、大阪で起こっているのが「公立離れ」だ。公立高校の志願者数が減少し、定員割れが増加。授業料負担がなくなる私立に生徒が流れているのだ。私立は受験時期が早いので、公立より先に合格を確定できる上に、学校の設備が公立より整っているところが多い。私立シフトがさらに進むのは固い。
高校の授業料無償化を推進することは一見、家庭の負担を減らし教育格差を是正するようでいて、その実、格差を拡大する側面を持つ。負担が軽くなった分を塾費用に回したり、より子どもが小さいうちに教育へ投資する家庭も出てくるからだ。教育格差を解消する政策としての是非は、議論の余地がある。
この議論を横に置くとして、私立高校は入学者を獲得しやすくなるし、私立中学校しかりだ。とりわけ関西は公立の進学校に通って国立大学に進学するルートが王道で、私立エスカレーター校の人気が首都圏に比べて弱かっただけに、一貫教育を訴求する千載一遇のチャンスとなる。
少子化が加速する中、チャンスを物にして関西のエスカレーター校で生き残るのはどこなのか。次ページでは、「関関同立」(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学)や「産近甲龍」(京都産業大学、近畿大学、甲南大学、龍谷大学)などを擁する関西の学校法人について、ダイヤモンド編集部が独自に作成した「裏・成績表」を大公開する。偏差値など表の情報からは分からない六つの指標で評価したもので、意外な伏兵もあぶり出した。