成長機会が得られなければ
満足感にはつながらない
ただし、初任給が高くさえあれば、それが入社の決め手や、その後の定着・活躍に直接結び付くかというと、そうとも言えない現実があります。
25年卒学生を対象にした「就職プロセス調査」で、就職先を確定する際に決め手となった項目を聞いたところ、「自らの成長が期待できる」が最多で49.1%でした。2番目に多かったのが、「福利厚生(住宅手当等)や手当が充実している」、3番目が「希望する地域で働ける」となっています。
ちなみに、初任給につながる項目として、「年収が高い」を決め手として選んだのは2割弱。働く条件面を重視する学生が一定数いるものの、どんなに待遇がよくても、成長実感が期待できる環境でなければ選ばれないといえるでしょう。
そこで参考になるのが、ハーズバーグの二要因理論です。これは、アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグによって提唱された、仕事への満足・不満足にかかわる要因には「衛生要因」と「動機づけ要因」があるとされる理論です。
衛生要因とは、「それがなければ従業員の不満につながる」というものを指します。不満を予防するためには必要なものですが、たとえ整備されても満足につながるとは限らないのが衛生要因です。具体的には、給与や福利厚生、経営理念、同僚や上司との関係性が挙げられます。
一方の動機づけ要因は、「あればあるほど仕事の満足度(モチベーション)につながる」ものです。具体的には、達成すること、承認されること、仕事への興味、責任と権限、昇進や成長が挙げられます。
どんなに給料が良くても、承認や成長意欲が満たされるような環境がなければ、モチベーションが上がることはなく、「このままここで働いていていいのだろうか」という不安の解消にはつながりません。
企業は、初任給アップなどの衛生要因へのアプローチを進めると同時に、「自らの成長が期待できる」と入社を決めた学生の思いに応えるべく、仕事へのやりがいを見いだせる働き方の工夫、成長機会の提供などに力を入れていく必要があるのです。