就職・採用に関する調査、分析を行う、リクルート就職みらい研究所所長の栗田貴祥氏が、就活の最前線を語る連載の第25回。今回は、キャリア自律をテーマに、企業と個人の対話の在り方を考えていきたい。
日本的雇用慣行が崩れ
重視される「キャリア自律」
日本社会はこれまで、終身雇用・年功序列を特徴とした雇用システムによって支えられてきました。しかし、技術力の進化とグローバル化によって、企業は事業構造をスピーディに変化させていかなければ生き残ることが難しい時代になっています。変化に合ったスキルを外部から取り込み、人材の能力を最大限に引き出すために、終身雇用・年功序列の在り方はだんだんとマッチしなくなってきています。
このような変化の中で注目されているのが、「キャリア自律」の考え方です。キャリア自律とは、自分自身のキャリアについて責任を持って行動し、自ら切り拓いていく姿勢を示します。自分がキャリアの主体であるという意味で、キャリアオーナーシップとも表現されます。
人生100年時代と言われる現在の社会では、従来の“定年”を迎えても人生はまだまだ続いていきます。一方で、事業構造の変化により、企業の寿命は短くなっており、「新卒で入った1社で勤め上げれば安泰」という価値観は崩れています。自分自身のキャリアの保証を一企業にゆだねてはいられなくなっているのです。
労働人口の減少による人手不足も深刻な課題です。リクルートワークス研究所の試算によると、労働供給は2030年に341万人余、2040年に 1100万人程度不足するとも言われています。社会において高齢人口の割合が高まるということは、必要な労働力の需要と供給のバランスが崩れ、慢性的な労働供給不足に直面するということです。
今後はこれまでの長期雇用保障に代わる「エンプロイアビリティ(雇用される能力)」を高める責任を、個人と会社が共有し、両者がキャリア開発に向き合い高めていくことが重要となっていくでしょう。