
就職・採用に関する調査、分析を行う、リクルート就職みらい研究所所長の栗田貴祥氏が、就活の最前線を語る連載の第27回。大手企業を中心に「初任給アップ」の潮流が目立つが、若手人材の定着・活躍につながる組織はどのように作ればいいのか。
経済的安定をもたらす初任給アップ
学生にとっても大きな恩恵
社会全体の賃上げの流れや、若手人材の確保が難しくなっている背景から、初任給を引き上げる企業が増えています。大企業を中心に30万円前後や、最大で40万円程度までの引き上げを行う企業もあります。これから社会人になる学生にとっては、喜ばしい変化だといえるでしょう。
入社1年目から、経済的に安定した生活が送れること。この価値は、昨今の大学生を取り巻く経済事情から見ても、非常に大きいことがわかります。というのも、現在、大学生の約2人に1人が、大学に通うために何らかの奨学金を得ている背景があるからです。
独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の調査によると、2022年度の大学昼間部の奨学金受給率は55.0%。04年度の調査では約4割だったことからも、増加傾向にあることがわかります。
同じくJASSOによる19年度の奨学事業に関する実態調査結果では、返済が必要な貸与型給付金の受給が約4割でした。貸与型給付金の奨学金制度を利用している学生の場合、経済的にも精神的にも、負担感は大きいのではないでしょうか。
昨今は、こうした不安に応えるために、奨学金の返済支援制度を設けている企業も出てきています。社会に出てからの経済基盤をより安定させようという企業のサポート姿勢は、学生にとってより魅力的になっていくでしょう。