欧米の「基礎控除額」は
日本の4倍で約200万円
日本のように所得控除を細かく設定するよりも、むしろ基礎控除に力を入れる国は多くあります。
基礎控除とは、最低限の生活に必要なお金には税金をかけないものとして、生活に配慮して人的控除を設定したものです。
所得が2500万円以下ならば、会社員であっても、自営業やフリーランスの人であっても関係なく、一律で48万円が控除されます。生活に余裕のある人には控除しなくてもいいという考え方があるのですが、余裕のある人を2500万円と設定しています。
ただし、今の日本の平均所得は世界に比べて低くなっていますので、所得1500万円までの人を対象に限定するという方法もあるでしょう。
また、この基礎控除は日本ではたった48万円となっています。給与収入48万円までは税金を払わなくていいという意味です。
しかし、欧米の基礎控除額は、イギリスでは237万円、アメリカ209万円、ドイツ184万円、フランス179万円で、日本の約4倍もあります。
基礎控除額については、国税庁も段階的に引き上げる必要があると指摘しています。国税庁(税務大学校)の研究論文「所得控除の今日的意義─人的控除のあり方を中心として─」では、「基礎的人的控除の水準」について、「基礎的人的控除は、最低生活費控除の性質を有していることを考えると、かなり低い水準になっている。とりわけ、同条の要請を受けて生活保護法があることを考慮すると、基礎的人的控除は生活保護基準に見合った水準に引き上げる必要があるとも考えられる~中略~公的サービスを賄うための費用を広く公平に求める必要があることから、主要国と比較した税負担水準や財政事情等を考慮して、段階的に見直すといった姿勢が肝要である」と書かれています。
一方、基礎控除を増やすことで住民税が減るため、地方の税収が減少することが懸念されています。ただ、個人ベースで考えると基礎控除を増やした方が、税制がシンプルで分かりやすくなることは確かです。一概に、海外との比較でどちらがいいか決めつけることはできませんが、地方財政には恒久的な財源を確保するように制度設計するなどで、減収を考慮しながら、国民の最低限の生活費の控除を考える必要があるかもしれません。
様々な観点から「103万円の壁」について再度、議論が必要だと思います。