
就活の公式スケジュールでは6月1日から「内定(内々定)」が出て、10月1日以降に「内定式」が行われる。通常、「内定」と「内々定」はひとまとめに扱われる。その違いや内定後の過ごし方を知っておこう。(取材・文/古井一匡)
企業による「オワハラ」に
政府が注意喚起
似た言葉ではあるが、「内定」と「内々定」には大きな違いがある。「内定」では通常、企業から採用通知とともに内定承諾書が送られてきて、それに署名捺印し返送する。これによって企業との間で雇用契約が成立する。雇用契約という法律上の関係が生じる点がポイントだ。
ただ、雇用契約について民法第627条によれば「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」となっている。
つまり、内定承諾書を提出した後でも辞退(雇用契約の解約)は可能だ。とはいえ、企業側からそれまでにかかった研修費用などの損害賠償を求められる可能性もゼロではない。
これに対して「内々定」とは、企業側からの内定の事前約束のこと。メールや口頭など形はさまざまだが、企業側が就活生に採用の意思表示をし、入社への意思を固めてもらうことが目的だ。「内々定承諾書」の提出を求める企業もあるが法的拘束力は全くなく、署名捺印したとしても自由に取り消せる。
「内々定」は自由に取り消せるが、企業の中には、学生たちに就活を終了するよう圧力を掛けてくることがある。「オワハラ(就活終われ、終わらせろハラスメント)」と呼ばれるものだ。
オワハラが増えている背景には、採用難や就活の早期化・長期化が関係している。内々定を先に出した企業としては、辞退されるとそれまでのコストや手間が無駄になる。そこで「オワハラ」に走ったり、それとなく就活の終了を求めるのだ。
政府では2023年4月、オワハラについて「就職をしたいという学生の弱みに付け込んだ、学生の職業選択の自由を妨げる行為」として注意喚起した。また、セクシュアルハラスメントを含め職業安定機関(ハローワーク等)と連携して相談窓口を設置している。