建機 陥落危機 メーカー&商社“背水の陣”#8 提供=日立建機

日立建機がインドでトップシェアを維持し続けている。その背景には、40年前からタタ・モーターズと提携してきた歴史がある。グローバルでは米キャタピラーとコマツの「黄色い」2社の存在感が大きいが、伸び代が計り知れないインド市場に強みを持っていることは、2社とは違った戦いを展開できる素地となる。「オレンジ」の勢力は将来、市場を三分できるのか。特集『建機 陥落危機 メーカー&商社“背水の陣”』の#8では、キーパーソンへの取材でインド市場の底力を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 井口慎太郎)

名門タタのブランドで得られる信頼と
デジタル技術で中国メーカーに対抗

 インドの建機市場における日立建機のシェアは20〜30%をキープしている。同国内で稼働している建機は4万台に上る。これは同国に進出している建機メーカーでトップだ。

 日立建機のインド進出は、1984年にさかのぼる。当時は現地資本の自動車メーカー、タタ・モーターズが自前で建機を製造していたが、油圧の技術で苦戦していた。その際にパートナーに選ばれたのが日立建機で、それ以来、両社は提携を始めた。日立製作所が既に同国内で家電を販売していたことも認知度向上に役立った。

 2000年にはタタ・モーターズの子会社に資本参加した。この会社が現在、インドで日立建機の製造・販売を担っているタタ日立コンストラクションマシナリーの前身だ。10年に日立建機の株式持ち分比率が60%、タタ・モーターズが40%となり、日立建機の連結子会社となった。

 インド国内のタタ日立の代理店の数も右肩上がりとなっている。24年現在で51社に上り、広大な国土を幅広くカバーする。建機のラインアップでは油圧ショベルのほか、日本では流通していない、前にバケット、後にショベルを備えたバックホーローダーも主力だ。

 機体には「TATA HITACHI」のブランド名が記されている。18年春まで3年間、同国に駐在していた高谷透・グローバル営業本部副本部長は「『タタ』の名はインドでものすごく親しまれている。そういう会社と長年組ませてもらっているので外資メーカーという見られ方はしていない。おかげでインド工科大学の出身者のような優秀な人材を採れている」と胸を張る。

 24年度第3四半期の日立建機全体の売上高に占めるインド市場の割合は6%だ。同国内の売上高は右肩上がりだが、全体に占める割合は過去10年間でほぼ変わっていない。

 トップシェアを誇るとはいえ、建機の最大市場である北米(22%)、価格が高い鉱山機械の需要があるオセアニア(21%)、本社と顧客との距離が近い日本(16%)と比べると割合はやや劣る。

 現在、建機の最大市場は米国だ。日立建機を含む各社が激しい商戦を繰り広げるが、この地を牙城とする巨人キャタピラーの販路を切り崩すのは至難の業だ。

 そんな中でインド市場は、グローバルで圧倒的な存在感を見せるキャタピラーとコマツの二大勢力に、日立建機が割って入る手掛かりとなり得るのか。次ページでは、今後、日立建機の強みとなり得るデジタル技術と、インド市場の将来性を明らかにする。