日米関係に新黄金時代の到来か、会談成功の裏にある石破の変身首脳会談で握手する首相の石破茂(左)と米大統領のドナルド・トランプ(右)。1泊3日の“弾丸ツアー”は明らかに国内外の石破を見る目を変えた Photo:JIJI

「ひと山越えたね」――。米大統領のドナルド・トランプとの初めての日米首脳会談後、首相の石破茂は周辺にこう漏らした。ワシントン滞在時間はわずか24時間。1泊3日の“弾丸ツアー”は明らかに国内外の石破を見る目を変えたのではないか。「全方位戦闘モード」(政権幹部)といわれるトランプが初対面の石破を持ち上げたからだ。石破に対する期待値が低かっただけに、トランプの一言は大きかった。

「偉大な首相になる。首相として素晴らしい仕事をするだろう」

 石破の盟友でもある総務相の村上誠一郎は「涙が出るほどうれしい」と語った。トランプは1月の大統領就任以来、ビッグサプライズを連発してきた。中国への10%の追加関税発動、パレスチナ自治区ガザを巡っては米国が所有した上で再開発……。そのトランプが石破の前では驚くほど友好的だった。懸念された日本への関税引き上げにも踏み込まなかった。

 もちろん石破が手ぶらで会談に臨んだわけではない。大統領選でトランプが勝利した段階から始めた用意周到な「トランプ研究」が奏功したといえる。徹底した「傾向と対策」を積み重ねた。それは安全保障、通商など日米間に横たわる問題へのアプローチだけではない。石破訪米を支えた政権幹部は「政治学より心理学」と語った。トランプの思考方法、立ち居振る舞いまで分析した。石破も帰国後、周辺にこう語っている。

「わざわざ相手の嫌がることを言っても意味がない。わずか2時間の首脳会談の中で“また会いたい”と思わせることが重要だった」