車載ソフト大戦争#2Photo:Jason marz/gettyimages

経済産業省は国土交通省と車載ソフトウエアの開発などで産官学の連携を促すコミュニティー「モビリティDXプラットフォーム」を立ち上げた。完成車メーカーとスタートアップの連携を支援したり、生成AIや車載向け半導体などの共通化を促したりして、SDV開発を後押しするのが狙い。ただ、大手メーカーによってクルマ造りに対する考え方は異なり、足並みをそろえるのは容易ではない。特集『車載ソフト大戦争』の#2では、共通化による効果と克服すべき課題について明らかにする。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)

研究開発費の3分の1を
車載ソフト開発に投じるメーカーも

 ソフトウエアがクルマの価値を決めるソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)の領域で先行する米テスラや中国BYDなどに追随すべく、政府主導で立ち上げたのが「モビリティDXプラットフォーム」だ。

 モビリティDXプラットフォームは、ソフト人材の育成や自動車メーカーとベンチャー企業の交流などの活動内容は多岐にわたるが、最も注力するのが仕様の共通化だ。

 政府はSDVの開発に当たって、クルマの制御や車内エンターテインメントに関わる装置、生成AI(人工知能)など7分野を協調領域として分類。それらを共通化することで、各社が競争領域である車載OS(基本ソフト)や自動運転技術の開発に集中できる環境を整備する。

 こうした取り組みを産官学連携で進めて、2030年にSDVの世界販売で、日本勢が世界シェアの3割に当たる1200万台を確保することを目指す。

 共通化を目指す背景には、競争領域の開発に莫大な研究開発費がかかることがある。

 デロイト トーマツ グループがまとめたレポートによると、調査対象とした自動車メーカーのうち、4割以上がソフト開発に年間10億ドル(約1500億円)以上を投資している。特にSDVの領域で遅れが目立つ欧州勢がソフトに投じた資金は1社当たり平均で30億ドル(約4500億円)に達しており、研究開発費全体の3分の1に当たるという。

 巨額投資は各社の予算を圧迫し、ソフト以外の重要分野の開発からもリソースを割くことになるため、かえって国際競争力を低下させるリスクもはらんでいる。

 次ページでは、協調領域を共通化することによる具体的な効果と、日本勢がSDVのシェア3割を確保するための課題を明らかにする。