自動車・サプライヤー SOS#8Photo:Eoneren/gettyimages

トヨタ自動車などを頂点とするケイレツは、日本の自動車産業の「強み」であり、電機メーカーを凋落させた水平分業の波にのまれることもなく生き残った。だが、自動車産業が右肩上がりの時代は終焉。ケイレツのヒエラルキー構造は傘下の企業から機動力を奪い、EVメーカーがバッテリーなどを内製する垂直統合の時代に置き去りにされつつある。特集『自動車・サプライヤー SOS』の#8では、自動車のサプライチェーンの緊急事態に迫った。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)

トヨタですらケイレツが「強み」から「リスク」に!
自動運転とEV化でサプライチェーンが激変

「売るほどに大赤字だった初代プリウスを20年かけてもうかるクルマにした。トヨタとサプライヤーが(原価低減を)頑張った成果だ。しかし、ケイレツが今後どうなるか見通せず、心配だ」

 トヨタ自動車グループの部品メーカー関係者は、ケイレツの行く末をそう心配する。

 自動車産業が右肩上がりだった時代は、トヨタの値下げ要求をサプライヤーが受け入れ、一時的に収益が悪化しても、販売台数の伸びが帳消しにしてくれた。

 トヨタにとって、原価低減は日本有数の利益をたたき出すための「頼みの綱」だった。ところが、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大以降、原価低減は有効でなくなる(下図参照)。生産を効率化しても、原材料などのコストアップがそれを上回る事態が続いたのだ。

 その上、今後は、EV(電気自動車)化やギガキャストといった技術革新による部品需要の減少や、ソフトウエアの開発競争での出遅れなど、トヨタが誇るケイレツの結束がほころびかねないリスク要因がめじろ押しだ。

 次ページでは、日産自動車やホンダなどのサプライチェーンを含むケイレツの機能不全リスクや、ケイレツが分化していくとみられる「3類型」を明らかにする。世界の自動車業界の激変を見て見ぬ振りをして、ケイレツのヒエラルキー構造にしがみ付いていたら、時代に取り残されかねない。