トランプ大統領Photo:Bloomberg/gettyimages

対中関税とアジア新興国
漁夫の利を得るのか

 米国と中国という超大国間の貿易戦争が激化しており、その狭間でアジア新興国は難しい対応を迫られている。

 第1次トランプ政権による対中関税引上げは米中間の2国間貿易を激減させたが、その際にはアジア新興国は漁夫の利を得たような形で対米輸出を伸ばした。

 米国の輸入に占める中国のシェアは2017年から2024年までの間に8%ポイントも低下して13.4%となった。その穴を埋める形で輸入シェアを上げた国を挙げると、ベトナムと台湾が2%ポイント、韓国が1%ポイント、タイとインドが0.6%ポイントと、アジア新興国が目立つ。

 今回の対中20%追加関税で、米中の2国間貿易は一段の縮小が見込まれる。しかし対米輸出増加を見込んでアジア新興国が喜んでいるかというと、問題はそう単純ではない。

 中国からの輸入減少は他国からの輸入で埋められ米国の貿易赤字は変わらなかった。この教訓から今回は、対米貿易黒字の大きいアジア新興国にも高関税が課される可能性が高まっている。

 アジア新興国にとって悩ましいのは、直接関税の脅威が迫っていることだけではない。対中関税の引上げで対米輸出が増えたとしても、それが必ずしも自国経済にとってプラスにならないことが問題を複雑にしている。