
トランプ米大統領は、輸入する自動車と自動車部品に一律25%の関税をかける大統領令に署名した。それまでに実施した関税と合わせるとその経済への影響は大きく、景気後退期入りの懸念も出てきた。関税が固定化すればFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げも市場予想より早くなる公算が出てくる。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
“トランプ関税”がついに発動!
景気悪化懸念におびえる株式市場
3月26日にトランプ米大統領は「米国の開放の日の始まりだ」と宣言し、4月3日から米国が輸入する自動車、自動車部品に25%の関税をかける大統領令に署名した。
1月20日の大統領就任以来、トランプ氏は賦課、撤回を繰り返しつつも各種の関税をかけてきた。
関税による景気後退懸念から、米国株は下落基調に転じている。S&P500は、2月19日の6144をピークに、3月13日には5521まで下落した。26日も5693とピークより7%低い水準である。
先行きを示す経済指標も悪化している。3月4日に発表されたISM(米供給管理協会)製造業景況感指数は2月に50.3と、景気判断の分かれ目である50を上回ったものの市場予想50.6を下回った。
米調査会社コンファレンス・ボードが25日に発表した3月の米消費者信頼感指数は前月から7.2ポイント減の92.9と、2021年1月以来の低水準となった。同指数は個人消費の先行指標とされる。2月の小売売上高も前月比0.2%増と市場予想の0.6%増を下回った。
アトランタ連邦準備銀行が公表しているGDP(国内総生産)ナウは26日現在、1~3月期のGDP成長率が年率換算で1.8%減とマイナス圏に沈んでいる。
関税による景気減速懸念が強まる中で開催された3月20日のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、1月に引き続き2会合連続で政策金利は据え置かれた。
FOMCメンバーの政策金利見通しを示すドットチャートの中央値が示す年内の利下げ回数は2回と、こちらも1月会合と変わらずだった。
しかし、GDP成長率やFRB(米連邦準備制度理事会)が物価動向を測る指標として重視する食品とエネルギーを除いたPCE(個人消費支出)コアの見通しについて、前者は24年が2.1%から1.7%に下方修正され、後者は2.5%から2.8%に上方修正された。
パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で「全体としては依然安定した経済状況であると考えている」としつつも、関税の影響については「貿易政策の見直しと、その経済に与える影響の不確実性が非常に高い」と警戒している。
GDP成長率の下方修正は利下げ要因、上方修正は利上げ要因。相反する材料がある中、今後FRBの金融政策はどう動くのか。次ページでは、トランプ関税を受けた米国経済の行方を検証しつつ、政策金利動向を予測する。