日産 消滅危機#15Photo:123RF

米トランプ関税と中国大失速――。自動車メーカーなど国内製造業が、米国と中国という二大マーケットの業績下振れリスクに恐れ慄いている。奇しくも経営統合の協議を開始したホンダと日産にとっても、米中はドル箱市場だ。ダイヤモンド編集部では、製造業112社の米中依存度ランキングを作成。特集『日産 消滅危機』の#15では、米国と中国にビジネスを依存している日本企業を炙りだした。ホンダと日産は何位にランクインしているのか。(ダイヤモンド編集部編集長 浅島亮子)

ホンダ・日産連合の業績下振れリスクも
米トランプ関税と中国失速のダブルパンチ

 1月20日、いよいよ第2期米トランプ政権が発足した。トランプ新大統領は就任演説で、「米国の労働者と家族を守るために貿易制度の見直しに着手する」と発言。関税など外国からの全ての歳入を徴収する外国歳入庁の創設について言及した。

 かねてトランプ氏は、同盟国を含む世界の国に対して一律で10~20%の輸入関税をかける方針を強調してきた。これまでの主張が口先ばかりのパフォーマンスではなく、関税導入への意欲を改めて見せつけた格好だ。

 仮に、一律関税が発動されたならば、国内製造業は大きな打撃を被ることになるだろう。

 第1期のトランプ政権が発足したのは、2017年のこと。当時と比べても、米中の対立は激化するばかりで、終息の兆しは全く見えない。それどころか、国内製造業が抱える「米中分断リスク」は、さらに高まり、かつ複雑化を極めている。

 自由貿易から保護貿易へ――。第1期のトランプ政権では、日系メーカーは、自由貿易を前提としてきた生産体制・サプライチェーンを再編成し、マーケットに近いところで生産する“地産地消”を進めてきた。

 第2期のトランプ政権では、国内メーカーは、第1期以上に高度で緻密な対応を迫られることは間違いない。とりわけ、米国と中国という二大市場に依存している自動車産業が被るネガティブインパクトは大きい。

 まずは、米国と中国もそれぞれが、重大な問題を抱えている。

 米国では、冒頭のようにハイパーで広範な関税導入リスクが高まっている。すでにトランプ氏は、メキシコやカナダからの輸入品に関税を課し、中国からの輸入品に追加関税を課す方針を明らかにしている。自動車メーカーにとって、米国はドル箱市場。日本からの完成品・部材がターゲットになるリスクがある上、メキシコ製・中国製の完成品・部材を米国に入れているケースが多く、調達コスト上昇が利益を圧迫しかねない。

 中国では、米国による対中規制が一層強化されており、対米輸出の芽が摘まれている。また、景気の減速も懸念されている。

 こうした米中の自動車市場の停滞・縮小自体も問題なのだが、日系自動車メーカーが“ラストリゾート”としてきたタイなどASEAN市場が急激に販売不振に陥っていることだ。

 この背景には、二つの事情がある。一つ目は、米国発の利上げの余波でアジアの政策金利が高止まりしており、自動車ローンの利用を手控える傾向にあること。

 二つ目は、対中規制の強化により米国などへ輸出できなかった中国自動車メーカーが、安価な電気自動車(EV)を大量にASEAN地域に投入している。コストパフォーマンスのみならず、品質も向上している中国車がアジアで猛威を振るっており、日本車の競争力が相対的に低下しているのだ。

 このように、世界のマーケットはつながっており、米国の政策転換や米中対立の激化が、回り回ってアジアの経済を冷やしたり、競争環境を激化させたりしている。

 ただでさえ、米国の政治リスク、中国の販売不振に頭を抱えている日系自動車メーカーにとっては、ASEANの販売不振は痛手以外の何物でもない。

 そこでダイヤモンド編集部では、自動車メーカーを含む製造業112社を対象に米国と中国で事業展開している企業のランキングを作成。米国と中国への依存度の高い企業を炙り出した。

 米中への依存度が高い企業はどれなのか。経営統合に向けた協議を始めたホンダと日産は何位にランクインしているのか。次ページで、製造業112社「米中依存度」ランキングを大公開する。