さて、本日から皆さんは伊藤忠商事の商人になるための見習いを始めることになりますが、業務の習得以外にお願いしたいことを二つ申し上げます。
一つ目は、「人間力と感性の鍛錬」です。人間力が磨かれれば、自ずと人を惹きつけ、人脈も広がっていきます。そして、感性を磨くことで、一歩先を読む力やお客様が求めるものの本質を見抜く力を身につけることができます。このことは、皆さんが今後の経験を通して個別に磨き上げるスキルであり、こればかりは流石のChat GPTでも教えてはくれません。
岡藤会長CEOがメディアの取材や、先日の日本経済新聞の「私の履歴書」でもお話しされている「商人は水であれ」という言葉があります。これはビジネスにおいて、社会の潮流や風向きを読み、様々に変化するお客様のニーズに変幻自在に対応していく感性を磨けということだと思います。この感性を磨くことで、ビジネス上のバリューチェーンにおいて、どこで自分の付加価値を生み出せるのか、社会に対してどんな価値を創造できるのか、そして如何にして商売の主導権をとるのかなどを考え抜いて仕事を仕立てることが出来るようになります。
今話題の生成AIなどは有用なツールではあるものの、リアルの現場は単純ではなく、複合的な世界です。いつの時代も未来を見据えた大事な決断は人間が行ってきました。本質を見極め、柔軟かつ複合的な判断を下せるように、是非ビジネスを通して世界で通用する「人間力と感性の鍛錬」をして頂きたいと思います。
二つ目は、「信用を勝ち取る」ということです。人間が深くかかわる現場のビジネスの世界は、人と人との掛け合いの世界です。「人間力と感性」を磨く過程で勝ち取った、皆さんの信用が、また次のビジネスへの信用に繋がり、そしてまた次と、信用の連鎖が生まれてゆきます。