こういうときには決まった手順は1つしかなく、メアリーもどうするべきか、もうよく心得ていた。

 彼女はドンとミミ(編集部注/ギャルヴィン家の父と母)のベッドルームに駆け込み、ドアに鍵を掛けると、警察に電話した。マットが彼女に向かってきたのは、そのときだ。警察にやって来られることだけは避けたかったからだ。

 メアリーが受話器を手に、震えながら座っているなか、かつてはいちばん崇拝していた兄が、ドアを壊そうとしていた。

 マットがメアリーに手出しできる前に警察が到着した。マットは病院に連行された。

 兄の1人を病院に収容させた責任をメアリーが感じるのは、これが初めてだった。兄たちにこれほど長い年月にわたって激しい怒りを感じてきた後で、この入院について罪悪感を覚える自分に、メアリーは驚いた。

 兄たちに傷つけ合ってほしくないと、自分が本気で願っていたことにも、彼女は驚いた──兄たちに対する途方もない憤りが積み上がっていたにもかかわらず、自分が依然として彼らを気遣っていたことにも。

入退院を繰り返した兄
鍵をかけて閉じこもる妹

 マットが最初にプエブロの病院に入ったのは、1978年12月7日だった。5日後、ピーターもそれに続いた。その年、3度目の入院だった。ドナルドもその年、プエブロの病院への入退院を繰り返していた。

 ギャルヴィン家の兄弟3人が、同じ病院の別の病棟に入ったわけだが、それはこのときが最後とはならなかった。

 その一件以来、メアリーはマットとピーターと3人きりで家にいるときには、誰かが帰ってくるまで、両親のベッドルームに鍵を掛けて閉じこもるようになった。

 ピーターはメアリーに歳がいちばん近い兄で、5歳弱しか離れていなかった。今ではこの家で過ごしているピーターは、何を言われてもノーと言う壁のようなものだった。

 助けはいっさい拒み、助言にはすべて逆らった。自分に医療が必要だとはまったく思っていなかった。したがって、3週間ごとにプロリキシンの注射を受ける必要があるとも考えていなかった。