『あんぱん』撮影現場では
「楽屋に入らない」と決めている

――いったん捨てる。切り替えはいいほうですか。

 俳優の仕事は、適宜切り替えることも仕事のひとつだと自覚しています(笑)。

――現場で会話を多くするために心がけていることはありますか。

 例えば『あんぱん』はクランクインから半年間たちましたが、撮影中は楽屋に入っていないんです。基本的に僕は前室(スタジオの前で待機する場所)にいることが好きで、いつもそこにいて、みんなとしゃべるようにしています。

――戦争のシーンを演じていていかがでしたか。

 嵩の人生観が変わるタイミングであり、『あんぱん』の非常に大きなテーマである「逆転しない正義」という言葉にも関わってくる大事な部分です。食料がない苦労だったり、そこでの会話だったり、この先の柳井嵩を作るものが詰まっているところなので、しっかり演じたいと思います。戦争中のシーンのために水も抜いて、痩せました。

――さきほど、唯一、球を自分から投げるとしたら「絵」だとおっしゃっていました。絵を描くシーンはいかがですか。

 僕は小学生の時、絵画教室に通っていて、選択授業も全部美術で、美大も考えたことがあったので、もしかしたらちょっと嵩と通じるものがあるかもしれないです。

 デッサンは下手ですが、メソッド自体はわかるので。現場には絵の先生がいらして、その場で嵩が描いた体(てい)の絵を描いてくださって、本番ではその絵をもとに僕が描いていきます。僕はトレースすることが得意なので、先生の描いた線が何のためのものか僕なりに理解して、本番で再現しています。