その結果、いざ彼女が辞めるとなると、あたふたすることになる。

 もし、彼女の働きぶりを適正に査定し、早めに正社員のオファーを出していれば、このような「人財」の流出は防げたかもしれない。

 ならば、正社員である上司がやるべきことは、このようなことが二度と起こらないよう、組織の仕組みを変えるべく働きかけることだ。それができないようでは、管理職失格である。

「社会的交換理論」に基づく
認知的トレーニングで人財流出を防げ

 筆者は、このような人財流出を未然に防ぐためには、ある認知的トレーニングが有効だと考えている。それは社会学や心理学の理論の1つである「社会的交換理論」に基づくものだ。

 社会的交換理論とは「人や組織は、有形無形の『資源』を交換することで相互に利益を得ている」という考え方で、人間関係や組織間の関係を分析する理論である。

 その一番簡単なものが、経済交換だ。我々は、お店で150円という資源を相手に渡し、ジュースという資源と「交換」する。

 職場では「労働力」と給与や福利厚生を含む「待遇」を交換している。この場合、労働力は目に見えるものではなく、客観的な定量化は難しい。つまり捉えどころのないものだ。だが、確かにそれがなくては仕事は回らないので、「資源」の1つだ。

 この社会的交換理論についての入門的な考え方は、拙著『不機嫌な職場』や『フリーライダー』に詳しいので、そちらを参照いただきたい。

 今ここで重要なのは、それを活かして、人財流出を防ぐための手段の紹介だ。

 直観的にご理解いただけると思うが、交換の資源の価値が高いほど、またたくさんの資源を持っている人ほど、より質の高い、より多くの交換相手に恵まれやすい。