【ワシントン】ドナルド・トランプ次期米大統領は、グリーンランドやカナダ、パナマ運河の支配権獲得に意欲を示している。おそらく同氏の心を捉えているのは、古くからの考えを21世紀に当てはめたものだ。その考えとは、大国が経済・安全保障上の利益を守りたいなら、勢力圏を確保して自らの意思を小国に押し付ければいい、というものだ。
トランプ氏が7日の記者会見で明らかにした 2期目の外交方針 は、同盟や自由貿易ではなく経済的圧力と一方的な軍事力に訴えるというもので、相手が同盟国でもそれは同じだと示唆した。
同氏はパナマ運河とグリーンランドを力ずくで手に入れることを辞さない構えを見せた。さらに、カナダに極めて高い関税を課し、米国への併合を受け入れさせる可能性も示唆した。
「カナダと米国が一つになれば、本当に素晴らしいことだ」とトランプ氏は語った。「人為的に引かれた国境線を取り除いてみれば、国家安全保障の面でもずっと良くなるだろう」
軍事力や経済力を使ってグリーンランドやカナダ、パナマ運河の支配権を握ることは、数十年にわたる両党の歴代大統領による外交政策とは一線を画す。トランプ氏が公言していることの一部でも実行に移せば(いずれも実現の可能性は極めて低いが)、世界における米国の役割は一変し、敵対国をつけあがらせ、米国の後ろ盾を失った同盟国は新たな安全保障・経済協定を模索することになる。アナリストはそう指摘する。
トランプ氏が掲げる外交政策の大幅な方向転換は、長年主張してきた相反する信念の寄せ集めが根底にある。それは、緊密な関係にある同盟国でさえ米国を不当に扱っている、米国はパナマ運河を無償で譲渡した、 中国が米国の支配下にあるべき西半球に進出 している、という考えだ。