【オピニオン】ベッセント氏、若き日の経済秩序回復を再現できるかPhoto:Bloomberg/gettyimages

 どんな成功者にもオリジンストーリー(起源の物語)があり、実話の場合もあれば作り話のこともある。ジョージ・ワシントンと桜の木や、カリブ海の島での極貧状態からニューヨークに向かったアレクサンダー・ハミルトンといった話だ。リンドン・B・ジョンソンが米副大統領だったとき、彼に敬服する1人の外国人から、丸太小屋で生まれたというのは本当かと尋ねられたことがある。「いいえ」とジョンソンは答え、「あなたは私とエイブ・リンカーンを混同している。私が生まれたのは飼い葉おけの中だ」と語った。

 スコット・ベッセント米財務長官は、ここまでの偉大さには達していない。しかし、彼には有名な、そして真実のオリジンストーリーがある。彼は(何と幾度かにわたり)著名投資家ジョージ・ソロス氏の薫陶を受け、イングランド銀行(英中央銀行)を破った男だ。イングランド銀行が1992年に通貨ペッグ(連動)制を防衛しようとしていた際、ベッセント氏らが主導したソロス・ファンド・マネジメントは同中銀に対抗する方に大きく賭けた。ソロス・ファンドが勝利し、英中銀が敗れたことはよく知られている。

 鮮やかな成功を収めたこの取引が現在、改めて響き渡っている。まさにその時の報いを受けるかのように、ベッセント氏は自分が政府対市場の闘いの反対側に置かれていることに気付く。その経験から得られる貴重な教訓がある。

 今と同じように1992年当時も、ある政府が悲惨なまでに誤った経済戦略にしがみつこうと苦闘し、それを維持するためにますます苦しまぎれの策を講じ、その中で信用を失墜させた。それは経済と政治に永続的な影響をもたらした。