
日本の経営者の報酬が低いと指摘されて久しい。それでも、実は日本の上場企業には「年収1億円以上」のビジネスパーソンが1109人もいる。成果に見合った報酬を受け取ることは当然といえよう。ただし、大事なのは納得感だ。業績や株価が振るわなければ株主は不満を持つだろうし、なにより従業員の士気が下がる。そこで、今回は医薬品業界の1億円以上もらう役員と従業員の年収格差ランキングを作成。特集『1億円以上稼ぐ取締役1109人はもらい過ぎ!?「年収1億円以上幹部」と従業員の年収格差ランキング』(全24回)の#6では、医薬品業界の年収1億円以上の経営幹部と一般社員の年収格差の実態を調査、実名ランキングで43人を検証する。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)
リストラがお家芸の武田とアステラス
両社の幹部こそ従業員との年収格差が大きい
医薬品業界ではリストラが続いていて、武田薬品工業はその筆頭格だ。背景や詳細は『【25年の製薬業界】武田薬品に続きリストラに踏み切る可能性が高い製薬会社の「特徴」とは?』や『【製薬大手4社“稼ぐ力”徹底比較】武田とアステラスで「大規模リストラ」が必須になる理由』を参照してほしい。
実は、その武田薬品のクリストフ・ウェバー社長は、従業員のなんと192.55倍の年収を受け取っていることが判明した。
ダイヤモンド編集部では、経営トップの会長、社長のみならず役員を対象に、年収1億円以上の高額な報酬を受け取っている人物を業界別に集計した。1社から複数人が記載される場合もある。その経営幹部である人物の年収と従業員の平均年収を比較し、何倍の開きがあるかでランキングを作成した。数字が大きくランキングの上位にいるほど、従業員の待遇との格差が大きいことになる。
また、本特集では高収入を単純に批判する狙いはない。ランキングには、年収額と併せて、PBR(株価純資産倍率)、ROE(自己資本利益率)、時価総額も掲載しているので、それらに「見合う年収」を得ているかどうかの判断の参考にしてほしい。今回対象としたのは医薬品業界だ。
では、医薬品業界の「年収1億円以上」の経営幹部で、従業員の年収と格差が大きいのは誰なのか?
トップは前述のように武田薬品のウェバー社長で、20.8億円を受け取り、従業員との格差は200倍近く。しかも、3位までを武田薬品の幹部が占める結果となった。4位は同じくリストラに励むアステラス製薬の幹部だ。
第一三共や中外製薬の幹部も上位に名を連ねるが、両社の経営指標はどれも業界平均より高い。武田薬品とアステラス製薬は時価総額以外が振るわないから、そこが大きな違いといえる。リストラも続き、業界平均より低い経営成績に従業員は何を思うのだろうか。
武田薬品、アステラス製薬、第一三共、中外製薬、塩野義製薬、エーザイ、窪田製薬ホールディングス、ジーエヌアイグループ、ロート製薬、ステムリム、参天製薬、大塚ホールディングス、ネクセラファーマ、小野薬品工業、ツムラ、ペプチドリーム、協和キリンといった企業の幹部たちの年収は幾らで、従業員の何倍をもらっているのだろうか。次ページで実名と共に一挙に見ていこう。