暗闘を繰り広げるIOCとFIFA
両者の溝が生じるきっかけは?
サッカー界の総本山、国際サッカー連盟(FIFA)はIOCの決定に反対していない。ジャンニ・インファンティーノ会長は、むしろ女子の出場国数の増加を歓迎するコメントを発表した。
「FIFAは常に女子サッカーの力を信じており、IOC理事会による決定は前向きな一歩だ。これは女子サッカーがオリンピックでより大きな表現と存在感に値する、という我々の共通の理解を反映している」
IOCの総会を前にして男子の出場国数減を提案したのは、実はFIFAのインファンティーノ会長だった。当初は男女ともに16カ国を要望していたが、その場合はサッカー競技全体における選手、スタッフの総数がIOCと合意していた上限を大幅に上回るため、一転して男子の削減を選択した。
ジェンダーギャップの解消を掲げ、ロサンゼルス大会で男女の実施種目と競技者数をイーブンにする方針を掲げていたIOCにとっても、FIFAの提案は歓迎すべきものだった。女子サッカーの人気が高く、競技人口約270万人と世界で群を抜く多さを誇る開催国アメリカの実情にもマッチしていた。
女子サッカーにおいては未来像を含めた目標が完全に一致しているIOCとFIFAだが、対照的にオリンピックの男子サッカーをめぐっては水面下で長く暗闘を繰り広げてきた。
オリンピックでは1900年のパリ大会から、男子サッカー競技が正式採用された。FIFAもオリンピックを「世界最高の大会」と認めてきたが、アマチュア主義を遵守するIOCがサッカー界で多勢を占めていたプロ選手の参加を禁止。これが両者の間に溝が生じるきっかけとなった。
真の世界王者を決める大会として、FIFAは1930年にワールドカップを創設。オリンピックはアマチュア選手だけが、ワールドカップはプロ選手も出場できる大会として、両者は別々の道を歩んだ。しかし、1952年のヘルシンキ大会からオリンピックの勢力図が急変した。