日本サッカー界で進む
「ポストユース問題」の解消
オリンピックは大陸予選と本大会を含めて、各国サッカー協会は選手を拘束できない。特に本大会が開催される7月から8月にかけた時期は、ヨーロッパの各チームはシーズンの開幕へ向けたキャンプにあてている。大事な時期に選手を派遣してもらうには、特別な関係を築いておくしかない。
形こそ「23歳以下の世界大会」だが、特にヨーロッパの場合は、この年代の選手が所属クラブで主軸を担うケースが少なくない。若い選手を育てるのはオリンピックまでの戦いではない。ヨーロッパを中心としたこうした考え方は、今後もなくなるどころかさらに支配的になってくる。
要はオリンピックに価値を見いださない考え方の延長線上に、男子サッカーの出場国数の削減もある。オリンピックを選手育成の最終段階と位置づけてきた、日本サッカー界が受けた衝撃は大きい。しかし、FIFAの提案を受けての決定である以上は、元に戻る可能性はないと見ていい。
日本サッカー界には「ポストユース問題」が長く存在してきた。19歳から21歳までの、いわゆるポストユースと呼ばれる世代が、高校や下部組織のユース(18歳以下)チームから、Jクラブに加入したとたんに真剣勝負に臨む経験や時間が激減。結果として伸び悩んでしまう悪循環だ。
4月22日に千葉県内で、JリーグU-22(22歳以下)選抜と関東大学選抜の試合が行われた。JFAとJリーグがタッグを組み、ポストユース問題を解消させていくプロジェクトの第一歩で、5月には関西大学選抜戦が、秋には18歳以下の選抜チームでヨーロッパ遠征を実施する。
さらにJリーグは来シーズンから、21歳以下の選手を対象としたリーグ戦の新設も検討している。狭き門となるロサンゼルス大会へは、もちろんパリ大会から続投する大岩剛監督のもとで目指していく。同時に日本サッカー界をあげてポストユース問題解消に取り組む機運が加速すれば、オリンピック男子サッカーの出場国が大幅に削減された衝撃にもたらされる、いい意味での効果のひとつとなる。