
PHOTO: SAHIBA CHAWDHARY FOR WSJ
【ニューデリー】ドナルド・トランプ米大統領が2018年に中国との第1次貿易戦争を開始した時、ゼットワーク(Zetwerk)というインド企業は、シートメタル(金属薄板)や精密部品などを手掛けるインドのサプライヤー各社と世界の顧客を結び付ける取り組みを始めたばかりだった。
同社は現在、1万社以上から成るサプライヤーネットワークと七つの自社電子機器工場を持つ。最新の施設は3月に稼働し、洗濯機などの家電部品を製造している。
トランプ氏の貿易戦争は、第1次がインドの台頭を後押しし、第2次は同国に変革をもたらす可能性がある。ゼットワークの電子機器事業責任者、ジョシュ・ファウルガー氏はそう語る。「インドに好機が到来したのは確かだ」
現在は高関税の影響で、中国の輸出業者の多くが米国の消費者に製品を供給できなくなっているため、企業は中国に代わる米国向け生産・輸出拠点を探している。インドにとってはまさに絶好の機会となっている。
しかし、インドがこのチャンスを生かせるかどうかは分からない。世界最大の人口を抱えるインドは、中国だけでなく、政府の機動力が高い小国にも長年後れを取ってきた。しかも農業従事者の数は製造業従事者を大きく上回る。
世界のハイテク企業や小売企業はインドについて、中国やベトナムよりもビジネスがしにくいと述べる。理由として、政府の官僚主義、不安定な労働組合、コンプライアンス(法令順守)・課税面で懲罰的な対応を取る傾向を挙げる。米国への財輸出額は、人口14億人のインドよりも同1億人のベトナムの方が500億ドル(約7兆円)多い。