マックス・ウェーバー マックス・ウェーバー(1864-1920年)は一般に社会学の創始者と呼ばれている。1980年代の初め頃から、市場の急速な変化に対応できない官僚制を批判することが流行となっており、官僚制組織の概念を最初に生み出したウェーバーに批判の矛先が向けられてきたが、これは不当である。

 なぜなら、ウェーバーは官僚制を採用すべきものとして推奨したわけではなく、単に組織的な仕事のやり方として有効であると解説しただけだからだ。

 リーダーシップや権力や権威という概念についてのウェーバーの思想は、彼の官僚制の説明と密接に関連している。彼の思想を知らなければ現代の組織を理解することはできない。

人生と業績

 社会学者兼哲学者としての彼の関心は、組織をはるかに超えて、自然科学、宗教、政治、経済にまで及んだ。彼の貢献は非常に広範囲に及ぶため、現在では社会学や経済学や哲学といった数々の学問分野が彼を自分の仲間だと主張している。彼の成長や発達を特色づけた人間関係を検証すれば、ウェーバーがなぜ権限や権力や責任といったものに関心を持ったのかが理解しやすくなる。

 マックス・ウェーバーは1864年4月21日に7人兄弟の第一子として生まれ、頑固な権威主義者の父親が支配する文化的なブルジョア家庭で育った。ウェーバーはハイデルベルク大学で経済学、中世史、哲学のほかに法律も学んだ。兵役期間には彼のおじである歴史学者のヘルマンバウム・ガルテンとその妻の世話になった。この2人はウェーバーにとって良き師となった。おじはリベラリストで彼を知的な仲間として扱い、おばは自分の慈善活動に対する深い社会的責任感で彼に感銘を与えた。2人は、庇護者然とした権威主義で息子に接したウェーバーの父親とはまったく対照的であった。

 当時の人々は、縁者びいきや出生の偶然から権力や権威を得るのが一般的だったが、それに対してウェーバーが合理的でないと反感を抱くようになったのは、おそらくこの期間においてだろう。彼は、個人的判断や、感情、私欲で曇った判断から個人をできる限り解放する方法を考え始めた。

 ハイデルベルク大学とベルリン大学で法学者として過ごした後、ウェーバーはフライブルク大学の政治経済教授となり、その後はハイデルベルク大学でも政治経済学教授になった。

 組織研究に対する彼の主要な貢献は、なぜ人は命令に従うのかという彼の興味に端を発している。この興味は、抵抗にかかわらず服従を強いる力としての「権力」と、明らかに自発的に当然のこととして命令に従わせる力としての「権威」とを区別させることになった。

思想のポイント

 ウェーバーは、「権力」という概念の定義を、他人の抵抗があっても自分自身の意志を貫く力、極端に言えば他人を服従させる能力であるとしている。必ずしも「リーダーシップ」や「権威」と同義ではないが、常に何らかの形でこれらと結びついている。彼は、組織における権力を組織の構造と権威に結びつけて考え、およそ階級や官僚制があるところには権力が内在すると考えた。また、権力の影響の大きさは、誰が権力を握っているか、その人物が他人にどのように見なされているか、そしてどのような状況下で権力が行使されるかによって決まるとした。ウェーバーは、正当的な権威として以下の3つの類型を示した。