ナゲットを「主役」に据える狙いとは?

一方、チキンマックナゲットは定番商品であり、年間を通じて常時提供されている。にもかかわらず、GW前後には価格を大胆に引き下げ、特別なソースを加えることで、季節限定の演出をまとって登場する。
「季節に合わせて新商品を出す」という通常の流れとは異なり、「変わらない商品を季節に合わせて装飾する」という逆のアプローチである。
消費者にとっては、いつでも買えるはずのナゲットが「GW前後だけ特別仕様で登場する」ことで、新商品として消費者に覚えてもらう必要のない商品として、気軽に新しさを楽しめる構造になっている。
消費のハードルを下げながら、新鮮な体験だけを加える設計である。ソースの開発だけなのだから、マクドナルドにとっても低コストでの商品開発になっているわけだ。
このように、GW中のチキンマックナゲットは、マクドナルドにおいてサイドメニューから戦略的中核商品へと再定義(昇格!?)された存在である。いわゆる「マクドナルドの4P戦略」(『The 4P Analysis of the McDonald’s Marketing in the United States』Rikang Jiang, 2025年)すべてと接続しており、実証的にもその有効性が示されている。
製品(Product)の面では、変化しない定番に季節限定ソースや形状の多様性を組み合わせ、繰り返し性と意外性を両立させている。価格(Price)では、期間限定の割引価格が単なる安売りではなく、お得感と選択の自由という体験価値の向上を伴って設計されている。
流通(Place)の観点では、在庫管理・調理・提供が標準化されており、全店舗での同時展開が現実的に成立する「オペレーションにやさしい商品」となっている。販売促進(Promotion)では、CM、SNS、アプリ、パッケージが統合的に連動し、ブランド体験と日常生活が自然に接続されている。
チキンマックナゲットは、GWのマクドナルドの主役になるのだ。