病院を例にとってみましょう。今でこそ日本の大病院は、外科は黄色、内科は緑色という風に色分けされていて、内科に行きたい人なら黄色のテープのある廊下をたどれば行けるようになっています。
これは1990年代、「米国の病院では、色分けで内科、外科、小児科などを表記している。日本もそれに倣ったらどうか」という提案が基になりました。米国の場合、多人種・多言語という事情もあり、それを前提に診療科目別に念入りに色分けがなされているのです。また点滴薬の袋も、名前が似ていて間違える確率が高いものは色分けして、誰でもわかるように作られています。
東京の地下鉄も、銀座線、丸の内線とすべて色分けされていて、地図を見て漢字がわからなくても、その色の地下鉄に乗れば、どの駅に辿り着けるかわかるようになっています。これも人間工学による、交通標識です。
なぜ高速道路でも、こうした方法を採用しないのでしょうか。大した予算がかかるわけではありません。外国人観光客に運転免許を簡単に与える以上、すぐにでも事故を防止するための改革に取り組むべきでしょう。
衝突事故の続発に見る
「自動運転」への誤解
第二に、建造物への衝突についてです。これも統計上は確かに増えています。しかし私は、自動運転に対する誤解が事故を増やしているように思います。
自動運転にはレベル5までの段階があり、自動運転車は現在、日本車ではレベル2までしか市販されていません。2021年にホンダが世界初のレベル3となる新型「レジェンド」を限定販売しましたが、現在は生産が中止されています。
本格的な自動運転と呼べるものはレベル3からと言われており、レベル2はある程度ハンドルから手を離しても自動で車を制御できる能力があるとされていますが、前を走る車との衝突を完全にハンズフリーで回避できるかどうかについては、条件がまだかなり限定されています。高齢者が乗っても自動運転車なら安全で衝突しないとは、まだ言えないのです。
さらに、日本の衝突事故検証制度には、車種が公表されないという欠陥があります。欧米のほとんどの国では、事故が起きると必ず車種が公表され、官民挙げての調査が行われます。それに対して、人命に関わる調査を客観的な立場の組織ではなく、事故を起こした自動車のメーカーが自社で調査するだけという状況がどれだけ危険か、誰しもわかるでしょう。